2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

禁じられた恋の島 『イル・ポスティーノ』ゲイ映画解説3

■マイケル・ラドフォードの映画『イル・ポスティーノ』(Il Postino, 1994タイトルはイタリア語で郵便配達夫の意味)は、その生涯の一時期イタリアのナポリの近くの島で亡命生活をおくったチリの社会主義者でノーベル賞詩人パブロ・ネルーダと、世界中からネル…

平凡パンチ

8月29日のニュースステーションで往年の昭和の男性誌『週刊平凡パンチ』を取り上げていたので、その企画とはべつに思い出した。リドリー・スコット監督『エイリアン』(1979.やがてシリーズ化される第1作)のなかに『平凡パンチ』が登場することは、よく知…

ホロヴィッツ先生

エドワード・W・サイードのピアノの先生は、イグナス・ティーゲルマン*1といって、ポーランド出身のピアニスト。ユダヤ人。ティーゲルマンは、同じくポーランド人のピアニスト、レシェティツキ*2について、ウィーンでピアノ演奏を学ぶ。ドイツで音楽と哲学を…

モンスターズ・イン・ザ・クロゼット『モンスターズ・インク』Monsters Inc.2(2001) ゲイ映画解説2

●この映画はDVD化されたときに見た。見終わった私は、不思議な感覚にとらわれた。それが何であるのかすぐにはわからなかったも。そこで海外のネットのサイトを少しあたってみた。私はもやもやとした思いが晴れ、確信はゆるぎないものになった。 ●ディズニー…

ボディ・ダブル:『パールハーバー』Peal Harborゲイ映画解説1

▲日本の真珠湾攻撃からアメリカの東京空襲までの歴史的転機を舞台にしてこの映画*1が描くのは男性どうしの友情である。戦争という混乱期を経た友情の固さを確認する物語となってこの映画は、のっけから、いたずらをした男の子を、その子の友人の男の子がかば…

公開されない質問状

****様 これはおおやけにしても証拠はなく、私の悪意ある捏造と思われるかもしれないので、ここでは現実にあったことか、虚構かを保証しないかたちで提示するしかないが、しかし、証人はいる。またその証人は、巻き添えにはなりたくないはずなので、この…

シェイクスピア・シネマコンプレクス1

*シェイクスピア・シネマコンプレクス(しかし、それにしても、冥王星が惑星から消えた。ニール・ジョーダン監督『プルートーで朝食を』をみて感激した私はどうしたらいいのだ。まあ60年代の曲そのものにはとくに感銘はうけなかったが、詞の発想はよかったの…

孤独の井戸

俳人の山頭火の生まれ故郷といっても、あまり意味がないかもしれない。日本中全国を旅したわけだし、故郷に墓があるわけでもない。山頭火ラーメンは旭川に本店があるわけだけれども、旭川の地とは無関係。ただ無関係でも名前を使えるくらいだから、場所と山…

送信されなかった1通のメール

**** さま 8月23日 実はこのメールは日曜日の夜に書くはずでしたが、日曜日はメールが多くて時間がなくなり、翌月曜日に書こうとしたところ、無責任なコメントをするよりも、もう一度じっくり読み直したほうがよいと考え、火曜日の深夜から水曜日にかけ…

こんなもんじゃよ

思い出した。 憶えているだろうか。 20世紀の最後の10年に、筑摩書房が「ちくま日本文学全集 全60巻」(あとで巻数は増えた)を出したことがある。この全集が異色なのは、かつて昭和の最盛期に出された数多くの文学全集とはちがって、サイズは文庫サイズ。コ…

徒労

本日はオバサンのところに行ってきました。 まあ無駄な一日でした。 今日は、こちらの電話機の横のスイッチが、 知らないうちに動いたみたいで 電話がかからなくなったのですが、 あわてふためいてあちこちいじっているうちに 原因がわかりましたが*1、 それ…

映画会総括

19日土曜日の映画会、Y田さんは来られなくて残念でしたが、Nさんの飛び入りもあって、少人数ながら盛会でした。 A 映画について昨年、同じ岩波ホールで『父と暮らせば』を見て、みんな立ち直れないほどの衝撃を受けて、和民までたどり着いたのでしたが、今…

日本英文学会支部関東支部批判3

不愉快な話題に戻る。 富山太佳夫氏の「学術書翻訳者育成講座」も終わったようだが、私はこれをすでに批判した。それはこの夏休みという時期は、外国文学や外国文化の研究者は、海外にいることが多い。日本に残っているのは事情がある者たちばかりだろう。そ…

飛べ十式

十式雷撃機という、そんな軍用機があったのを知っているだろうか。十というのは大正十年のこと。大正十年に開発されたという意味で、このほかに十式戦闘機、十式偵察機というのがある。 この十式雷撃機(以下十式とさせてもらう)は、日本で最初で最後の三葉…

おやじ狩り

駅の近くの書店で本を買うためにレジ前に並んだ。すると私の後ろから手を延ばして、私のすぐ前のレジのテーブルの上に自分が買う本を置いたおやじがいた。店員は私の前の客の買った本にカバーをつけている。次は私の番だが、いきなり目の前の台に、後ろの客…

現代の友情考2

以前、所要のため大阪のホテル、正確には豊中市のビジネス・ホテルに夏、泊まったことがある。朝食はロビーのある一階の喫茶店で出されることになっていた。曜日は忘れたが週日であることはまちがいなかった。トーストと目玉焼きの朝食を一人でついばんでい…

関東支部シンポジウム報告

前回の同じ人物からつぎのような報告もメールで送られてきた。 これもメールの一部で、本人も内容に責任を負うつもりはないだろうから、あくまでも参考までに。 それにしても支部長のはしゃぎぶりと、問題点がみえてくる。 関東支部の第一回シンポジウムに出…

現代の友情

昔から友達などいたことがない私は友情というものが大嫌いだが、幸い、現代の若者たちは友情が壊れているので嬉しく思っている。 今年のことならいいのだが、2年位前か、夏に大学のホールでエレベータを待っていたら、あとからやってきて並んだ大学生二人が…

学術書翻訳者育成ワークショップ報告

これはこちらから頼んだわけでもないのに、またこちらの文章を読んだわけでもないある人物から、「学術書翻訳者育成ワークショップ」に出席したときの報告が送られてきた。正式な報告をしようというメールではまったくなく、雑談的なメールの一部にすぎない…

ミステリアス・スキン 自作解説2

まだ自作解説をひきずっているのか、いい加減にせよと非難されそうだが、追加をすこし。あの小説はパロディあるいはパスティーシュかもしれないが、そのまま読むと中年の男性の少年への欲望を対象としたもので、不気味なペドフィリアに同性愛がからみ、ホモ…

明日の記憶

私の**がお世話になっております。心からお礼申し上げます。 本日、私が申し上げたいことは、日ごろのお礼につきるのですが、先日来、東京都東大和市の特養ホームにおける若い男性介護人たちのよる、90歳の認知症女性に対するセクハラ発言が問題化しており…

ヴェンデッタ

日本では2006年に公開された映画『Vフォー・ヴェンデッタ』(2005)は、よかった*1。革命という言葉は、その意味すらわからなくなった死語かと思っていたが、決して死語にしてはいけないこと、左翼革命の時代は必ず来るという希望を捨ててはいけないことを痛感…

書を捨て海外に出よう:日本英文学会関東支部批判2

昨日のイギリスでの航空機テロ未遂騒ぎの影響で、お盆休みの海外出国組は成田でたいへんな混乱に遭遇したようだが、夏休みを海外で過ごせるのは、事情があって日本にいなければいけない私のような者にとっては、うらやましい限りである。 外国の文学や文化や…

リンコルン

NHKの衛星放送で昔懐かしいアメリカのTVドラマを放送していたが、私の子供の頃、かなり人気があったドラマに『逃亡者』というのがあった*1。その後もリメイク的な映画化されたことで(ハリソン・フォード主演)名前だけは知っている人も多いだろう。NHKBS2で…

自作解説

はじめてから1週間たったこのブログだが、なんと2週目は小説、それも官能ポルノ小説を書くことになるとは、自分でも予想できなかった展開となった。しかしこの短編、このまま放置しておくと、作者の私はたんなる変態オヤジに成り下がるので、ここであえて1日…

ヴァレンタインbis

これはある短編小説のパロディだが、同時に、その短編小説へのオマージュにもなっている。明日、自作解説を載せる。 ヴァレンタインbis 地下鉄の駅の通路を歩いているときから、熱風が吹き込んできた。そう、これが長らく経験してこなかった**市の湿気と熱…

寄附行為

毎日更新している日記(というよりエッセイ)が、あまりに楽しすぎて、肝心なことを忘れていた。日本英文学会関東支部について疑問点を書き連ねることである。 日本英文学会を支部方式にするのなら、それはそれで反対はしない。そのほうがいろいろな面で運営…

建築関係者の計算

実は、この本は贈られてきたもので、私が購入したものではない。中身はひどい。自分の家のドアにウンコを投げつけられたような気がする。飯島洋一*1のトンデモ本『グランド・ゼロと現代建築』*2である。そのなかでサイードを扱った章がある。内容はひどいも…

翻訳 鷹の目

いくら英語の専門家とはいえ、英語で書かれた論文がすべて読みこなせるわけではない。専門外の分野の論文はまったく意味がとれない。それでも翻訳を頼まれるときがある。専門家に聞けばなんとかなると思われるかもしれないが、たまたま知人に該当分野の専門…

もうひとつのめだかの学校

おそらくそれは最初から結果ありきだったのだろう。これほど重大なことだから、当然多くの者が首をかしげ疑問に思い、問いただしているはずだが、とるに足らぬ愚問として一蹴されたようだ。まさにごり押し。最初から決められていた結果を押し通すとは!彼を…