ファクトリー・ボーイ


前期の授業のレポートを読んでいたら、このブログの読者でもあった学生から、カンブリア宮殿を観ました。総長のすごい豪邸に驚きました。と同時に、私(つまり大学の教授)が、豪邸に住んでいないことにも驚いたという内容のコメントが添付されていた。


誤解のないように付け加えれば、この学生は熱心かつ優秀な学生で、みんながこの学生のようだったら、有意義で充実した大学生活なり授業ができるのにと常々思っている。しかも英文科の学生ではない。


そもそも英文科の学生は、まあ、日本中どこの大学でも同じかと思うのだが、とにかく英文科の学生は、優秀な学生にまじって、どこにも行き場所がなかった学生とか、英文科だったらなんとかなるだろうという学生が多く、彼らは、残念ながら、モーティヴェイションが極めて低い。やる気もなくて、ぎりぎりの低空飛行をしながら、なんとか卒業するという状態である。あとこれは私の大学だけの特徴なのかもしれないのだが、英語が不得意だから英文科にはいったという学生がいる。英語が不得意だったら他の学科なら卒業できても、英文科は卒業できないんじゃないかとその学生に質問したら、答えがかえってきた。あまりにひどすぎて書く気がしない(これを書くと私の大学の学生がみんなこうかと誤解されるといけないので、書かない。またその答えは教員とか大学に関する意見ではない)。


その学生は、あらゆる教員から、英語能力がないと指摘され、卒論の口頭試問にいたっては、指導教員から人格攻撃(教育的指導というべきかもしれないが)されて、ぎりぎりで卒業した(ちなみに卒論の口頭試問で人格攻撃があったのは、私の知る限りその一例だけである)。


閑話休題。優秀な熱心な学生なのだが、たぶん、その学生と私とが同じような居住環境にいることに驚いたということである。教授というのは、豪邸じゃなくてもいいのだが、先祖代々の立派な家か、大きな書斎のある家で研究しているものだと思っていたが、学生と同じような部屋で研究しているというのは驚きだったのかもしれない。


その原因はまた別の機会に書くことにして、近々、火災報知機の検査があるというので、日頃のゴミ屋敷を片付けた。


こういう団地に暮らしていると、10階以上の高層階では、年に2回くらい、火災報知機の検査にくる。すべての住居ではなく、あくまでも10階以上なのだが、火災報知機は、各戸の各部屋に一つついていた、さらに押入れとかクローゼットの天井にもついている。その火災報知機を全部を正常に機能しているか検査されるのである(検査は5分もかからない)。


必然的にすべての部屋に人がはいるわけだから、あまり散らかしてはおけないから、整理整頓して掃除もすることになる。忙しいときは、検査の当日の朝まで掃除していてることもある。


幸い、今回は早めに片付いたが、これからまた散らかることがないよう整理整頓と掃除を心がけようと気持ちをあらたにしたが、それにしても掃除しても、私の作業場は雑然としている。やはりこれは作業場で、工場だ。なんだか工場で寝泊りしているような、そんな気になってきた。ファクトリー・ボーイか。


ちなみにイギリスの映画で邦題が『ラブ・ファクトリー』(2002)という、わけのわからないタイトルの映画を観たことがある。現代はThe One and Onlyというけっこう平凡なタイトルなのだが、なぜファクトリーなのか。工場の話ではない。どうやらこれは同じく英国のラブコメで大ヒットした『ラブ・アクチュアリー』の人気にあやかろうとしたものか。とはいえ、タイトルはひどい。映画そのものは、コンセプトは面白いと思ったが、いまひとつ面白くない。「イギリスの伊東美咲」とAmazonでファンが呼んでいて、なるほどと思ったジャスティン・ワデルなんかが出ているにもかかわらず(パッツィ・ケンジットが肥満していたのには驚いたが)。あとシエナ・ミラー主演の『ファクトリー・ガール』(2006)というのがある。アンディ・ウォーホールに可愛がられたが薬物中毒で若くした死んだカリスマ的モデル、エディ・セイウィックの生涯に基づいて作られた映画。ウォーホールは、自分のスタジオのことを「ファクトリー」と読んでいた。