米軍基地
TBSの昼のニュース・バラエティ番組ピンポンで、官僚の豪華宿舎が、公園を予定していたはずの基地跡に建造されることになり、住民が反対している。自然を壊し、25階くらいの公務員宿舎――タワーだが――を二棟も作る必要性があるのか、そもそも約束と違うのではないかと。米軍基地の跡地だという。
ぼんやりみていたらそれは埼玉県朝霞市のことだというので、え、それだったら私の部屋から見える範囲だ。どのあたりに宿舎タワーが出来るのかわからないが、たぶん、私の部屋から必ず見えるはずである。建てられたの話だが。
え、それにしても米軍基地?
米軍基地ではなく、自衛隊の朝霞駐屯地でしょ。しかし朝霞駐屯地がなくなるという話は聞いたことがない。朝霞市には朝鮮戦争の頃まで米軍基地があったとか聞いたことがある。それが朝霞駐屯地になったものと思っていたが、どうもちがうらしい。
実は今回、たしかめた。しかし、たしかめる前に私の頭のなかに、いつしか埋め込まれた偽の記憶というのはこうであった。
(以下、偽記憶なので、誤解のないように)
朝霞駐屯地は、その前は米軍基地だった(さらにその前は知らない)。朝鮮戦争の頃で、米軍の物資と兵隊が朝霞の米軍基地に集結し、そこから朝鮮半島へと出兵した。現在の東武鉄道(東上線)は、現在のように都心と住宅地をつなぐ私鉄ではなく、物資と兵員を運ぶために出来た路線。だから通常の私鉄とはちょっと違っていた。1980年代に私がこの地に引っ越してきた頃は、まだ妖精たちが電車に乗っていた。いまでは宅地が増えて妖精たちも追いやられ、彼らを電車のなかに見ることはなくなったが。
これはまったくでたらめだった。でも妖精たちは確かにいた。それは断言できる。私も妖精たちを見なくなったのは、私の精神状態が無垢を失ったのではなく、沿線に住宅地が増えたからである。
朝霞駐屯地の前は米軍基地キャンプ・ドレイクではない。キャンプ・ドレイク*1が朝霞駐屯地になったと書いてある資料もある。ちなみに駐屯地は私の部屋からは南南東に、キャンプドレイク跡地といわれている青葉公園周辺は私の部屋からは東にあり、同じ場所とは思えない。だがキャンプドレイクの南側が朝霞駐屯地になったという資料がある。たぶんそういうことか。
テレビの報道でいう米軍基地の跡地というのは青葉台公園(あるいはその周辺)のことである。地図だけではよくわからなかったが、ネット上の航空写真だとよくわかった。木々の生い茂る場所が広がっている。そしてその航空写真には私の住んでいるところもうつっていた。そして私の部屋の窓からも見えた。あそこにできるのか。朝霞市に出かけることはめったいにないが、以前、朝霞税務署に申告に言ったとき、道路両脇に緑の生い茂る公園のような場所を通った記憶がある。
ただそれにしてもキャンプ・ドレイクは1972年に返還されている。それをテレビでは「米軍基地→公務員宿舎」というような表示をしていたが、それはおかしいだろう。
米軍基地の跡地問題じゃなくて、米軍基地の跡地でありつづけて手付かずの場所の利用問題なのだから、強いて言えば「米軍基地→未使用跡地→公務員宿舎」であろう。米軍基地払い下げ問題ではない。なにか誤解に満ちた報道のような気がする。間違っていないからいいという問題ではない。取材する側の認識の低さや準備不足あるいは表現不足が、重要な報道そのものの信憑性を疑わせてしまっては惜しいのである。