クローサーZERO


Aさん(女子学生)
Bさん(男子学生)
私(本人)


ある日の会話、といっても11月7日のことだけれども。


私「……それはクライヴ・オーウェンでしょう。もうアメリカなんかでは公開されていて、来年、日本でも公開される映画『エリザベス』の続編にもサー・ウォルター・ローリー役で出ている。テレビでちらっと予告編をみただけだけれど、ジョゼフ・ファインズは出てなくて、サマンサ・モートンスコットランドメアリー・スチュアートのようだ」


B「『エリザベス』よかったですよね。でもクライヴ・オーウェンは思い出せない……」


A「『クローサー』にも出ていて、ちょっと脂っこい」


私「まあ、『クローサー』のジュード・ロウなんかと比べたら、それは脂っこいかもしれないけれど、
存在感もあって、好きな女性も多いみたい。最近、いろいろな映画に出ているし。『キング・アーサー』のアーサー王だったけれど」


B「思い出しましたよ。ああ、あれがクライヴ・オーウェン。たしかに脂っこいかもしれない」


私「まあ『キング・アーサー』では、たとえばランスロット役が、あの男、いまでは『ファンタスティック・フォー』にでている、あの……名前が出てこないけれども、あるいは完全にゲイ・カップルだったガウェンと緑の騎士で、ガウェン役は、『キンキー・ブーツ』の主役の社長だったあの……またも名前が出てこない。なんかと比べると脂っこいかもしれない。
 でも『クローサー』の舞台のほうでは、ジュード・ロウのやっていた役を、クライヴ・オーウェンがやっていのだけれども。まあ、あまり関係ないか」


B「『クローサー』の映画のほうは、面白かったのですか」


私「有名な監督の久しぶりの作品だということもあったのだけれども、現代の欧米系の男女がくっついたり離れたりする感じというのは良く出ていたのじゃないかと思うし、ストリップ小屋のシステムも映画をみるとわかるし。
 たとえば踊り子はポールダンスを踊るわけでしょう。ストリップの踊りなんだけれども。日本でも一部で流行っているようだけれど、あれは、ストリップの踊り。で、追加料金を払うと、個人で対応してくれるの」


A「そうそう、個室で一対一で踊ってくれるの。でも、絶対にさわっちゃいけないの」


B「『クローサー』の映画みたの」


A「先生が授業で配ったプリントに『クローサー』のDVDの写真があって、それでTSUTAYAで借りてみてみたの。ナタリー・ポートマンが超かわいい」


B「でも、先生の英文学史の授業では、そこまでいかなくて時間切れだったのでは」


私「そんなことはない。私の授業は、時間切れで現代(1990年以降の英国演劇)の演劇について講義することはできなかったということは絶対にない。予定してたいことは、もう事務的になっても絶対にこなすの。今年の前期なんか、病気で入院したり手術したりして、いっぱい休んだのだけれど、それでも、最後までやった。駆け足だろうが、事務的だろうが、なんでもとにかく予定していることはやることになっている」


A「やりましたよ。だって、プリントもっているんだから」


B「プリントというと、ウェルメイドプレイの作家たちがみんなゲイだって書いてあって、あれは面白かったですよ」


A「そうそう、オスカー・ワイルドとかノエル・カワードとか、モームとか。プリントには顔写真まで入っているから、ああ、この人たちがみんなゲイなんだって」


B「マーバーについては記憶がなくて、じゃあ、ぼくが休んでいたのかな。去年の夏休み前のことなので、忘れちゃったかな」


私「パトリック・マーバーの『クローサー』についてはプリントのなかで触れていたし、べつに粗筋なんか紹介したわけじゃないけれど、わたしたちが使っている英文学史の教科書のなかには、『クローサー』からの引用が3ページくらいにわたってあって、そのことは授業中にも話したはずなんだけれど」


A「え、そんな引用ありました」


私「『クローサー』のなかで、男二人がネットでチャットするじゃない。そのやりとりが延々引用してある」


A「え、それって、あぶないところじゃないですか。[Bに]あぶないっていうのは、エッチなところ」


私「いっぽうが女のふりをして、エッチな会話というかチャットをする」


B「おかまさん?」


A「そうじゃなくて、チャットの場合、相手の顔がわからないし、相手が男か女かもわからないじゃん。で、女になりすまして、いやらしいこと書いたりするわけ。え、でもそんなところ、教科書にのっけていいんでうすか」


私「[教科書をもってくる]ほら、ここ。ここからここまで。3ページにわたって引用してあるでしょ」


A「あ、ほんとだ」


B「ここに、単語というよりも文字がずらっと横に並んでいるのは何ですか」


私「それは興奮して、もだえて声を出しているということで、そういう表現をしているの」


A「いんですか、こんなの引用して」


私「それは教科書を作った人に聞いてくださいよ。私が書いたり、選んだ教科書じゃないんだから。でもまあ、あのチャットの場面は、『クローサー』を読んでいるといちばん面白いところだから、引用したくなる気持ちもわかる」


A「映画のほうは、人気がでたのですか。私は面白かったけれど」


私「それは良く知らない。でも公開も短期間で終わったみたいだし。それほど人気がでなかったのかもしれない。でも、面白かったならば、それでいいよ」


B「ぼくも、マーバーを勉強してみます」


私「うん、マーバーは、1990年代に出てきた劇作家で、評価も高いから、勉強するといいよ。映画のほうは舞台とちがって、ナタリー・ポートマンアメリカ人で最後にアメリカに帰るのだけれど、舞台はイギリス人で、アメリカに帰ったりはしない」