老人の国


最近、テレビでさかんに『相棒』の再放送をしていている。そのなかで今日は、杉下右京がロンドンに滞在している場面が出てきた。杉下右京/水谷豊がロンドンの名所(とでもいうべきか)をめぐっているシーンがあてって、アリス・リデルの墓参りをしたあと、キングズ・クロスの駅に行く。そこには93/4番ホームというのがほんとうにあって(てゆ~か、ほんとうじゃないにしても)、知らなかったので、驚いたが、それはともかく、杉下右京がロンドンを散策中に、用件があって亀山君が、滞在先の部屋に何度も電話をかけるが、つかまらない。ある日、杉下右京が散策から帰ってくると、ドアを激しく叩く音がする。近くの部屋に住んでいた老夫人がものすごい剣幕で苦情を言いにきたのだ。


その後、亀山君へ電話をした杉下右京の話によれば、右京の部屋に昼夜を分かたず電話がかかってきて、そのために近くの部屋に暮らしている老婦人が眠れなくて、また頭がおかしくなりそうになったと、そう老婦人が怒鳴り込んできたとのこと。たぶんそれは亀山君からの電話ではないかと思ったとつづくのだが、問題は、その老婦人の怒りよう。


確かに留守の部屋に何度も電話が、しかも深夜にかかってきたら、眠れないので、苦情もいいたくなるのだが、しかし、立場をかえれば、こちらにかかってきた電話だから、それはこちらの責任ではないし、謝ってお引取り願うしかないにしても、釈然としないものが残る。


いや、なぜこんなことを書いているかというと、私もイギリスにいた頃、見知らぬ老婦人から、ものすごく怒鳴られたことがあるからだ。その老婦人が怒る理由はあるのだが、しかし、それは私のせいではないし、さらに次々と苦情をまくしたてられて、何をそんなに怒っているのかわからなくなってしまったことも事実。結局、適当に謝って、その場を退散したのだが、その剣幕たるや、まさに杉下右京に苦情を言いに来た老婦人と全く同じだった。


ひょっとしたら、そういう目に、けっこう誰でも会っているのかもしれない。たんに杉下右京と私が運が悪かったというのではなく、イギリスでは日本人誰もが一度は経験していることなのだろうか。となると、そういうすごい剣幕で苦情をまくしたてるイギリスの老婦人というのは、一種のステレオタイプ化した存在なのだろうか。そこのところは要調査かもしれない(ちなみに、それは人種差別、民族差別、あるいは政治、宗教上のことではなかったと思っているが)。