平凡パンチ


 8月29日のニュースステーションで往年の昭和の男性誌『週刊平凡パンチ』を取り上げていたので、その企画とはべつに思い出した。リドリー・スコット監督『エイリアン』(1979.やがてシリーズ化される第1作)のなかに『平凡パンチ』が登場することは、よく知られている。

  映画のなかで、シガニー・ウィーバー扮する主役のリプリーが、イアン・ホルム演ずるアンドロイドに襲われ、あやうく殺されそうになる場面がある。もみあいになったとき、イアン・ホルムシガニー・ウィーバーの口のなかに、丸めた雑誌を押し込んで、窒息させようとする。そのとき使われたのが、部屋の机のうえにおいてあった栄えある『平凡パンチ』なのである。

  性的な意味が濃厚な、その場面。しかし丸めて縦に口のなかに押し込む雑誌は、たまたま撮影所にあった雑誌ならなんでもよかったというのとは、ちがうことを、シリーズ第3作『エイリアン3』(監督デイヴィッド・フィンチャー)で私たちは思い知ることになる。

  このシリーズでは凶悪な宇宙生物(「エイリアン」と呼ばれる)を捕獲して軍事利用する悪辣な企業が常に背後にあるわけだが、第3作になって、その企業が明らかになる。企業から派遣された科学技術者たちが登場するとき、黒いめがねと防護服で覆われた顔から表情は判別できないのだが、それは、どうみてもアジア人の顔だった。もちろんそれは中国、韓国、東南アジア系の企業という設定ともいえなくもない。しかし第1作の『平凡パンチ』。日本の武器商人たちの死をもたらす世界いや宇宙支配の魔の手。それも1979年の昔から設定としてあった。この日本企業はロボット=アンドロイドが得意分野ということになっている。その頃の日本は、世界にとって脅威的な存在でおかしくなかったということだろう。