鉄道マニア


英文学者の小池滋氏は、私とは専門が違うので、授業などを受けたことはないが、受けていれば自然と「先生」と呼びたくなるような、教育者としても研究者としてもすぐれた人物だと思う。


そして小池氏は、もちろん良く知られた鉄道マニアで、その盛名はメディアを通して一般に良く知られている。


あるとき小池氏(先生と呼んでしまいたいのはやまやまだが)と同席したことがある。そのとき小池氏は、教えている女子大の女子学生に、住んでいる場所とか利用する駅を質問し、その答えを聞いてから、そこの駅はこれこれで、どうのこうのと説明すると、みんな驚いたり、尊敬したりするよりも、気持ち悪がるんだと話されている。


そんなものかなと思っていると、小池氏が私に向かって、君の実家はどこにあったのかと尋ねるので、それは名古屋ですがと答えると、名古屋のどこと聞かれるので、御器所ですがとさらに答えると、地下鉄の御器所駅の近くかとさらに問われるので、そうだと答えると、ああ、あの駅は、大きな駅で、ふたつの路線が交差しているところですね、と小池氏が説明する。


え、なんでそんなことまで知っているのか。名古屋に住んでいるわけでもないし、名古屋に詳しいわけでもなく、ましてや通常のJRとか私鉄の駅ではなく、市営の地下鉄だ。鉄道マニアというのは、地下鉄まで守備範囲なのか。おまけに御器所を「ごきそ」と読むことも知っている。そもそも地下鉄の駅などもふくめれば全国ものすごい数のある駅、そのどの駅について答えるのかわからないのに、明らかに知っている。いや来ている。すごくないか。ほんとうに、どうしたのだろうか。


気持ち悪い。