BR話 二題


 これは昔、イギリスのテレビで見たコント。British Railの会議室、総裁が幹部たちから一年間の業務報告を受けている。その内容というのは時刻どおり定時運転できた列車全体の15パーセント、遅れて定刻どおり目的地に到着しなかった列車50パーセント。という報告。この報告のあと、若手の幹部から、「総裁、よくわからないのですが」と質問がでる。「その数字だと、100パーセントになりません。残り35パーセンの列車はどうなったのです」と。すると総裁は、うるさそうに、答える。「ああその35パーセントの列車はね、目的地に到着しなかったのだよ」。
 そこで若手の幹部からさならに「総裁、どうしてブリティッシュ・レイスは時刻どおり運行ができないのですか」と質問。
 これは、見ていたのがコントとはいえ、たしかに私も聞きたいことだった。列車の遅れはいうにおよばず、実際、列車が途中で動かなくなって、修理で立ち往生して、大幅に到着が遅れたとか、ときには他の列車に乗り換えさせられたということを、すでに経験していた私は、どうなっているのか総裁に聞きたい気分だった。
 すると総裁は、若い幹部にむかってこう言い放ったのだ。これがオチだったのが、総裁いわく、「君はまだ若い」と。


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 たしかノリッジの駅だったか、ターミナル駅なのだが、朝10時に出発の列車に乗ろうとした私は事情があり駅に来るのが遅れてしまい、列車にも乗り遅れそうなので、あせって急いでいた。
 この列車にまにあわなければ、1時間待たなければならないことを知っていた私は、昨日、駅で確かめ、いままた駅で確認したところの出発ホームに入り、停車中の列車に飛び乗った。飛び乗った瞬間、列車のドアが閉まった、そんな感じだった。間一髪というところか。息を切らしながらも、私は間に合ったことに安堵した。乗り遅れるかもしれないと思ったが、そうではなかった。今日はついているとも思った。
 だが、次の瞬間。私は、自分が、泣き顔になっていることを実感した。この列車は定刻に出発している。なぜこの列車は定刻に出発するのだ。出発ホームは確かめた。そう列車の行き先を確かめるべきだった。この列車は定刻に出発しているのだ。ブリティッシュ・レイルが定刻に出発するか。これは、これは、出発が遅れていた前の列車に違いない……。
 私は車内放送に耳を済ませた。案の定、私は違う列車に乗っていた。正反対の方向を目指す、急行に(各駅なら途中で下車してすぐに戻ってこれるのだが)。
 その後の悲惨な列車待ちと乗り換えの連続と、途中での列車の故障によって、目的地に着くのが、6時間以上遅れて9時すぎになったこと。しかもサマータイムだったから、9時すぎても夕暮れの時の明るさで、にもかかわず街頭には人が全くない、そんなしらけた町に戻ってきたことは、もう思い出したくもない。