ナイトメア 5


日曜日の催し物ネタの続き。


主催側の人から、休憩時間中、おばさまがご病気ですかというようなことを聞かれた。


ええ、皮膚に腫瘍のようなものができて云々と自然に受け答えができたのだが、本来ならそのときに異常事態に気づくべきだった。


伯母の皮膚の腫瘍とその手術をめぐっては、検査や説明などがあり、そのつど身元引受人として立ち会わねばならず、授業も休講を余儀なくされていた。そのため心配した同僚から、伯母のこと、私の予定のことをよく聞かれているので、今回も機械的に返答をしてしまったが、よく考えたら、質問を発した方は、私の同僚ではない。


そして雑談のなかで、私が地下鉄のなかで出口がわからず迷われたのかと尋ねられた。その質問は、実は、脈絡がなかったので、最初、何を質問されたのかわからず、私は一度ならまだしも、二度も三度も聞きなおした。私は基本的にいい加減な性格なので、聞き取れなかったり、意味不明の質問であったりするときには、二度も、三度も聞きなおすのは失礼かと思い、「ああ、そうですね」と生半可な返事をして、逆に、相手からあきれられることがある。そうして人間関係を自分から意図しないうち断ち切ってしまうことはよくある。


しかし今回だけは、幸いにもというべきか、失礼を承知の上で、何度も聞きなおした。そして地下鉄で迷った云々という言葉は明瞭に聞き取れたのだが、一瞬、意識に空白が生じ、そのあとすべてが明瞭になった。私が地下鉄で迷った(正確には、地下鉄から地上に出てから、目的地にいけずに迷ったのだが)ことは、私の個人的な体験である。誰にも個人的に話していないが、このブログには書いた。つまりそれは、ブログを読んでいますという暗号だったのだ。誰にも読まれていないと思われたこの匿名の日記が読まれていた。いやそれはいいのだが、知っている人が読んでいた。匿名の正体をとっくに見抜かれて……。