ハード・アカデミズム


昨日の大学院の授業で参加者の大学院生に質問しようとして、しなかったこと。


はい、要約そのものは、よくできていたと思います。もちろん完璧を目指すならば、全文翻訳するしかないし、そうなると要約ではなくなるので、どうしても省略はやむをえない。だから、ここを要約していないという質問なり批判は、誰だってできるし、その安易さゆえに、むしろそのような批判はつつしまねばならない。


そこを承知の上で、あえて質問するのは、この部分を要約していないということではなく、ここにある表記がどのようなことを意味しているか、この時代の文献について専門ではない人に説明してほしいからです。


もちろん今回の報告で、触れなくても、大きな影響はなかったと思うのですが、ただこの分野というかこの時代が専門ではない人が、わからなくて疑問をもちそうなところとして、あえて確認のためにお聞きするわけです。


あなたが要約したのは、**ページから††ページですが、そのなかでの##ページを見て欲しいのですが、


そう##ページです。そこに引用がいくつもあるでしょ。引用符のついた文の最後にカッコになかにアルファベットと数字を組み合わせたものがありますよね。それについて説明してください。


場所、わかりますか。そうです、そこです。G3vとかG3rとかA1vとか書いてあるじゃないですか。


場所、わかりますよね。そうそう##ページ。Yさん、わかりますよね。場所を教えてあげてください。


そう、そこです。それは何を意味しているのですが。


質問は、要約とかこの本の内容とは関係はないです。ただその記号の意味がなにかということです。わからない? この箇所は、あなたが担当だから、扱われている作品とか、人名や固有名詞、用語などを調べておく約束でしょ。


ささいな質問で申しわけないのですが、とにかく質問します。それはなんですか。なにを意味しているというか指示しているのですか。


わからない? Yさんなら、わかりますよね。ページの表記だと思う? 思うじゃなくて、そうです。ページの表記です、というか、どのページなのか示しています。むかしは、いまの本のように通し番号(出版関係者でいうところのノンブル)をつけるのではなく、このように表記していました。通し番号がついていないのだから、もうこれでページを示すしかないわけですが、わかりましたか。


わかった? そういえば聞いたことがある? じゃあシステムは、わかる? わかっているかどうか、わからない。


じゃあ、わかっているかどうか質問します。え~、ここにもってきたのはシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』のファースト・クォートのファクシミリ版です。ちなみに『ロミ・ジュリ』のファースト・クォートはバッド・クォートーです。ページを確認するだけです。


さて質問です。
G4rというのはどのページのことでしょうか。そのページにこの黄色い付箋をつけてください。


という質問は意味のあることかもしれないが、同時に、答えられて当然の質問だが、ひょっとして答えられないのことを危惧して、こうしたやりとりはやめることにした。ページ表記であること知っていれば、それでいいのだが、この質問は少し意地悪をしていて、通常ページ下にG4があらわれないことを知っての質問である。G1からG3までは現れるが、G4は印字されない。それでもG3とH1にはさまれた一枚がG4であるわけだから、G4の印字がなくてもページはわかる。あとはrが何を意味しているのか知っていれば、該当ページに付箋をはることはできる。


でもこうしたやりとりは、あほらしく思えてきたので、結局、やめた。ここにあるようなやりとりは起こらなかった。