暗い日曜日

本日、訂正を2点。


訂正 1 硫黄島


本棚を整理していたら、城山三郎硫黄島に死す』(新潮文庫、1997)が出てきた。短編集である。表紙やカバーにはルビがないが、当該作品のタイトルページ、文庫の解説、奥付に「いおうじま」とルビがふってある。それが正式なタイトルらしい。


昨日はフジテレビで硫黄島(くそ、私のコンピュータのワープロソフトは「いおうじま」で「硫黄島」と一発変換する。これが初期設定なのだろうか)関連のドラマをしていて、たまたまみていたら、「この一式陸上攻撃機は、すぐれた戦闘機」であるという馬鹿な台詞があって、すぐに見るのをやめた。最近では珍しく安っぽいCGで再現されたその一式陸攻(略称)は、みての通り、双発の爆撃機で、爆撃機は戦闘機とは呼ばない。「すぐれた軍用機」とでも言えばよかったのだろうが、脚本を書いた人間の無知が出た*1。軍隊関係の用語は、多くのドラマなのでは、まちがいだらけなので、「硫黄島」を「いおうとう」ではなく「いおうじま」と発音するのは間違いである、あるいは欧米の読み方に影響されたものと考えていたが、これは私がまちがっていたようだ。これまでの記述を訂正する。


とはいえ「いおうじま」とルビをふるのは、(1)「硫黄」という字が一般読者に読みにくいからという配慮と、(2)「いおうとう」という読み方も存在しているから正確な読み方を記したということだろう。この(2)のほうが有力だとすると、「いおうとう」という読み方はまちがいなく平行して存在していたことになる。S/Zみたいなものか。「いおうとう」という発音を、私はこれまで何度も耳にしてきた。


軍事関連でいうと零式艦上戦闘機というのがある。これは一般にゼロ戦と呼ばれているもので、英語でもzero fighterだが、正式な名称は「れいせん」である。だが濃い飛行機ファンでもミリタリーファンでもない私は「ぜろせん」で通している。「欧米か!?」とつっこまれそうだが、愛称あるいは略称として通用しているなら、それでよいと思う。まあ「硫黄島」はこれからは「いおうじま」という正式名称が通称にもなるのだろうか。


だが硫黄島の守備隊にならって、圧倒的に優勢な敵を前に、徹底抗戦すれば−−「しま/じま:S/Z」と「とう」との使い分けがよくわからない以上、どちらが正式かわからない。発音上の規則なのか、島の規模なのか。音読みとか訓読みが関係するのか。あるいは軍事上、そのように呼んだのか。ちなみに広辞苑では「いおうとう」が見出しになっていて、「いおうじま」は別称となっているが、右翼保守陣営からはだから広辞苑はまちがっているといわれるのだろうか。


硫黄島からの手紙』は、チケットを買うとき「いおうじま」と発音しなければいけないので、嫌だなと思っていたが、正式名称なら嫌がるほうがまちがっていると思い、映画でも観に行こうと思っていたが、まだ抵抗の余地はありそうだ。


Wikipediaの記述は正確はどうか疑問がもたれることもあるし、匿名記事であることも、正確さ・公平さを疑わしいものにすることがある。しかし「硫黄島」を調べてみると、以下のような注があった。

硫黄島の読み方は、戦前から「いおうじま」「いおうとう」の2種類が存在していた。旧陸海軍は「いおうとう」を使っていた。今日では「いおうじま」が国土地理院の地形図での表記となっている。アメリカ軍によるIwo Jimaの呼称は、旧海軍作製の海図のローマ字表記に基づくと考えられる。出典:小笠原諸島地名事典 Place Names

とある。


 ならば私も訂正しなくてもいいようなものだ。広辞苑も採用している「いおうとう」が軍事名称であり、軍事関連なら、こちらが正式名称で、年配の日本人には「いおうとう」のほうが馴染み深い。ただし、ふたとおりの読み方は前からあったわけで、どちらが正確とはいえなくなったため、どちらが欧米かもわからなくなったということで、一応、この記述を残す。


訂正2


前日の付記で触れた本は、本日になると、すで発売中で在庫ありとアマゾンに表示された。昨日のそれはコンピュータ上のミスだったかもしれず、刊行が当初、年明け2月であったかもしれないという説は、無根拠である可能性が高くなった。この時点で、訂正する。

*1:ちなみに1式陸攻は、ワンショットライターと言われたとか言われないとか説はわかれているが、高性能機でも攻撃を受けるとすぐに炎上した脆弱な爆撃機で、終戦まで使われ、また硫黄島の米軍を空爆したが、当時の第一線機ではなかった(だから硫黄島への郵便機として使われているのか)。いつから実戦配備された調べないといけないが、当時の最新鋭の爆撃は陸軍の四式重爆である。