アカデミー賞

スコットランドの黒い王様

アカデミー賞の発表があった。スコセッシ監督の『ディパーテッド』が四冠?あんな屑映画のどこがアカデミー賞なのだ。だいいちリメイクの映画じゃないか。リメイク映画がオリジナルを超えることもある。だが今回はオリジナルを越えられていない。そもそも三部作のオリジナルを2時間30分くらいに縮めた映画が傑作であるはずがない。まあスコセッシ監督への長年の苦労とか貢献に対してだろうが、不幸なのは、たとえ儀礼的でも、もう少しよい映画を作ったときに賞を授与すべきであった。


今回のアカデミー賞で、意外だったのは、そしてまた映画会社の先見の明のなさをまたも露呈させたのは、アカデミー主演男優賞を、日本では前評判にならなかったフォレスト・ウィテカーが受賞したことだ。ウィテカーは日本でも馴染み深い俳優*1だが、彼が主演した映画が『ラスト・キング・オブ・スコットランド』とわかって唖然。やばい。


日本でも3月に公開されるようだが、『ラスト・キング・オブ・スコットランド』の原作Giles Foden, The Last King of Scotland (1998)は日本ですでに翻訳されている。ジャイルズ・フォーデン『スコットランドの黒い王様』武田将明訳、新潮クレストブックス(1999)。おそらく再版されることだろう。もうされているか。


そう私はこれを翻訳者の武田将明先生からいただいた。いただいたけれど礼状を書いたかどうか定かでない。1999年のことだ。まあ、私は本をいただいても誰にも礼状を出さない、人でなしなのだから、たぶん出していないが、口頭でお礼を言ったのかもしれない。しかもまだ読んでいない。いま本棚から出してきた。翻訳で494ページだから、かなりの大作である。これから読もうっと。そして武田先生にもあらためてお礼のメールを送ることにしよう。映画化され公開され、主演男優賞記念として、いただいてから7年もすぎた時点で。

*1:Forest Witaker 1961-.ジム・ジャーミッシュ監督の『ゴーストドッグ』Ghost Dog: The Way of Samurai(1999)では主役で、強烈な印象を与えたが、私にとってはウィテカーとの出会いはニール・ジョーダンの『クライングゲーム』The Crying Game (1992)だ。あの映画のなかでIRAに拉致された黒人兵士役の彼は、小便をするとき縛られているため、手が使えないから、かわりに見張り役の新米にチンポコを触らせてオシッコをする場面があった。その新米IRAに扮したのがアスティーヴン・レイ(25日に触れた作品では物理学者のニスル・ボーア役)。チンポコを通して二人には友情が芽生える。やがてウィテカーが死んだあと、彼の恋人に会うことになったスティーヴン・レイ/ニルス・ボーアが、その恋人の股間に見たものは……。というのが、忘れもしない『クライイング・ゲーム』の世界。同じくニール・ジョーダン監督の『プルートーで朝食で』では、スティーヴン・レイはもう間違えることはなかった。