受付妄想


本日は、慶應義塾大学の日本英文学会の初日である。昨日、学会の事務局の人から、「19日に、関東支部支部長 富*太*夫 先生が、受付に立ち、関東圏に職場がある学会会員で、まだ関東支部に入っていない会員たちに、がんがんプレッシャーをかけるようだ」と、そう聞いた。


それを聞いた私は、「そんなことをしたら逆効果だ。富*先生もいったい何を考えているのか」と事務局の人に語っていた。


しかし、そのあと一人になってふと思いついた。富*先生が受付に立って、支部会員を募る? そんなの嘘だろうと、分かりきった話じゃない。またあの人の嘘を真に受けた人間がいる。そして私もそれに巻き込まれた。


富*先生は、どうやら、学会の受付に立つことに、オブセッションを感じているようなのだ。2006年8月26日の日記に、私は富*先生から聞いた「事実無根の話」を記した。その時は過去に私が直接耳にしたことを記しただけなのだが、はからずも、そこに真実の片鱗があったことが、今回立証されたようだ。なぜなら、そこでも、富*先生は、「学会の受付」の話をしているのだ。未来形で。つまり学会の準備の手伝いをしているという嘘と、当日、受付で補佐するという未来(実現するはずもない約束、そして現時点からふりかえれば実際、補佐などしなかった)が語られていた。


彼の妄想の宇宙が、またこれでひとつ解き明かされた。


現れるといって現れないのは、「嘘」をついたことにはならいだろう。未来は予測できないことがおこるからだ。しかし最初から守るつもりのない約束を口にするのは、嘘といってもいい。


今回、受付に現れるということを、前日、ブログに載せてもよかったのだが、そうすると誰かが本人に注進に及ぶかもしれない。そうしたら本当に現れるかもしれない。そこで今回、一日遅れで載せることで、富*先生がほんとうに現れるかどうか、試してみることにした。学会の事務の方に聞いたら、現れていない。当然といえば当然の結末だった。


それにしても、富*先生の言っているのは、未来のことであろうが、過去のことであろうが、こういう無責任な、口からでまかせばかりである。その口からでまかせには、彼特有のこだわりがかいまみえる。まさに個人的なファンタジーだ。だが周囲の者はそのことを真実として受け止める。彼のファンタジーのなかで「学会の受付」というのが妙に特権化されていることを知らない者は、あるいはそれに気づかない者は、ファンタジーを真に受けてしまう。そして真実に責任をとろうとしないこういう妄想狂は、必ず、嘘を垂れ流して周囲に迷惑をかける。


彼が困った妄想狂であることは、崇拝者たちは知らない(ことによると、その妄想の部分に心酔しているのかもしれない)。しかし彼が妄想狂であることを知っている人たちも多い(ただ彼が妄想狂であることを、ついつい忘れてしまう)。いま関東支部は会員が200名か300名くらいで、関東圏の英文学会会員からすれば少数派にすぎない。支部の会員が増えない理由はさまざまであろうが、支部長が妄想狂であると知っているか、そう感じている人たちも多いことも、その理由にあげられるだろう。かくいう私も、関東支部に入るつもりはない――この妄想狂が支部長に居座って支部を玩具化しているかぎりは。