目上の人


旧聞に属するが、日本シェイクスピア協会の回報Shakespeare News Vol.46, No.3(2007年3月号)に、変なことが書いてあると教えてくれた人がいる。変などころか、とんでもないことが書いてある。それを批判したい。


それは退任する委員からの提言ということで、内容はシェイクスピア協会とは関係がない。このような提言は、自由に書いてもらうのだろうし、ましてや退任する委員の書くことである。協会とは無関係なので、協会批判ではない。あくまでもその提言者の発言を問題にする。


提言の内容はともかく、一番あきれたのは末廣幹という馬鹿の次のような発言である。

さらに深刻に思われることがある。天に唾することを承知の上で述べさせていただければ、それは研究者としてのマナー欠如が目立つことである。若手として発表をして。(目上の)研究者に質問されたときには、学会や懇親会の会場で礼を述べ、後日、メールや書簡で礼状を述べるのがしかるべきマナーだと思うが、残念ながら、最近では、大学院生の発表に質問しても、その後発表者から礼を述べられることは稀になった。ここで若者のマナーの欠如について嘆くつもりもない。むしろ責められるべきは、学会で発表する上での基本的なマナーさえも教えられていない指導教員であると思っているからだ。(中略)大学院生の基本的なマナーのみならず肝心の研究に関してさえも、じゅうぶんに行き届いていない現状では、協会はひとつの教育機関として健全なチェック機能を果たしていく必要があると思う。

こういう馬鹿が6年間委員を務めたあと任期満了で退任したことは、ほんとうによかったと思う。日本シェイクスピア協会も、これでよくなろうというものだ。正直言って、この発言を読んだとき、末廣幹は精神に異常をきたしているのではないかと思った。もしそうならこの場で取り上げて、あれこれ批判するのは控えるべきであろう。正直なところ、事情はまったくわからない。もし本日のこの記述が、消えて別の記事に差し替えられたら、事情は察していただきたい。とりあえず正気だということで話をする。


まずマナーについて、このニューズレターでは退任する委員3名が、それぞれコメントを寄せているが分量はひとりが1ページちょっと。もうひとりが1ページ半くらい。この末廣幹が4ページである。たぶん分量は、多少の幅はあっても制限されているだろう。分量を守るという研究者や執筆者としての基本的なマナーをこの三人のうち誰かが守っていない。おそらく守っていないのは末廣幹だろう。もちろんほかの二人が分量を守っておらず、末廣先生様(偉い人には様をつけるべきかもしれないので、そうさせていだいたでございまする)だけが分量を守っているということは考えられる。理論的には。しかし私は、ほかの二人を個人的に知っている。彼らは、そんな規定違反、マナー違反をするような人間では絶対ない。末廣大先生様様が分量を無視して妄言を書きまくったとしか言いようがない。いやふつうに、その三人がいたら、このなかで誰が礼儀知らずで、マナー違反をするかといえば、末廣大大先生様様であることは、歴然としている。そんな無礼な人間に、若い連中はマナーを守れなどと、よく言えたものだと、ほんとうにあきれる。精神的に異常をきたしているのではないかと、これは冗談抜きで心配する。まあプロミスが、「マネーにもマナーを」とテレビで宣伝するのと同じことかもしれないが(ショコタンもあんなコマーシャルは早く辞めたほうがいいよ)。


あと末廣氏だけが掟破りの4ページを書いても、協会のほうは、そのマナー違反を注意せず、放任したわけだが、協会としては正しい判断だと思うし、たとえ内容が妄言でも、発言の自由を確保したわけだから正しいことをしていると思う。それだけに、学生のマナーをチェックしろ(いや正確には院生の研究者としてのマナーということかもしれないが、なんにせよマナーをチェックすること自体、おかしい)という末廣氏が退任したのは、協会にとってもほんとうによかった。また、この末廣氏は、みずからのマナー違反を、協会がチェックしなかったから生かされているのだということを理解すべきだ。


研究者発表者のマナーとは何か。研究発表をしたら、質問者にあとで礼を言うのがマナーだと? 私は、そんなマナーなど聞いたこともない。存在をまったく知らない。もちろん私は礼儀知らずの人間で、礼儀など守りたくもないから、そういうマナーとかルールがあることを知らなくて当然といわれるかもしれないが、よしんば、あったとしても、そんなマナーやルールなど打破すべきだと私は主張したい。そんなマナーがあったとしても、私は学生には、打破しろと強くすすめる。そんなマナーなど、健全な研究発表を阻害するものでしかない。しかも「(目上の)研究者に質問されたときは」だと。目下だったら、どうでもよいということか。となると目上にはへこへこし、目下は無視するということだろう。そんなことを学生に指導してみろ。教師の権威などがた落ちで、その後、学生からろくに口もきいてもらえなくなるぞ。末廣幹はほんとうに自分の学生にそういう指導しているのだろうか。それでよく学生に軽蔑されないものだと思う。


実は、末廣の提言がおかしいのは、研究発表の場でのマナー違反は、むしろ発表者ではなく質問者のほうに見られるからだ。くだらない言いがかりをつけたり、発表内容とは関係のない話を延々としたり、無根拠な暴言をはいたりと、マナーどころか、礼儀もわきまえず、発表者への最低限の敬意も欠いた質問者は多い。マナーをチェックせよというなら、むしろこうした問題のある質問者に眼を光らせるべきであって、質問者にお礼を言えというのは、発表者の態度を問題にするというのは、まったく筋違いだ。


質問者は、罵倒したり批判したり、自分の意見をとうとうと述べたりするのではなく、むしろ建設的な質問をすべきという主張なら、それはまともな意見だし、またその場合、研究発表者は、言われなくてもお礼をいうだろう。しかし末廣の意見は、「会員の方々も、建設的な質問をして、若い研究者たちを暖かく見守り、はぐくんでください」という提言ではなし、「最近の若者は打たれ弱いので、質問もきつい質問ではなく、暖かい質問をしてもらいたい」とか、「建設的な質問をしてほしい」という提言でもない。「目上の質問者」は大事にしなさい。「こちらの方は偉い先生だから、お礼を言っておきなさい、それがマナーだから」という、完全に上をあがめ、下を見下している、一番嫌われるパタンのアドヴァイスをしている。


べつに質問者に対して自発的にであれ、強制的にであれ、お礼をするというのは、それは好き勝手にすればいいと思うが、それをしないと重大なマナー違反のような口ぶりは、学会の自由な発言の場を堅苦しいものにしかねない。


また質問は、建設的な質問がいいとは思うものの、時には、重大な疑問を感じた上での質問で、その質問によって悪意がなくても発表者を窮地に立たせるかもしれないし、また発表者と立場が違えば論駁したいことだってある。またいくら打たれ弱いといっても、建設的ではなく破壊的な批判をもらうこともまた、重要だという面もある。そうしたときに、つまり発表者とどうしても敵対的関係になるときに、あとから発表者が自発的ならまだしも、マナーだからと発表者からお礼を言われてもうれしくないし、発表者だって自分と立場の違う人間に頭を下げたくもないだろう。逆に、発表者があとでお礼をしにくるからといって、質問者が質問内容に手心を加えるようなこともあってはいけないだろう。質問者が自由に質問できないような状況を作っておくのは、学会の発展どころか阻害以外のなにものでもない。


あと引用したこの末廣の提言を読んでみると、批判の対象は、マナー知らずの若い研究者だが、それを通り越して、若い研究者をマナー知らずにした年寄りの指導教員ということになっている。若者批判はまずいということで、年寄り批判に変えたのか(しかし彼が気に入らない若い研究者、またとりわけ気に入らない若い女性研究者に口汚い批判をしているのは学会でよく知られている)。ただ子供じゃないんだから、またいくら最近の若者が礼儀知らずとはいっても、指導教員がいちいちマナーまでチェックし指導などしない。指導などしたら一生軽蔑される。と同時に、こちらもパラノイアになっていて、どうやらこの指導教員というのは私のことではないかと思えてきた。


実は最近学会で発表した院生に聞いてみた。その院生はもちろんこのニュースレターは知っていて、自分は、質問者にあとでお礼を言っていたので、自分のことではないと語っていた。私は今後は、質問者へのお礼はあくまでも自発的にすればいい、そんなマナーがあったら踏みにじりなさい、それが人間として健全なことですと指導しておいた。とはいえその院生が、質問者へ礼を言っていたとしても、末廣は、私と同じパラノイアだから、事実には関係なく、その院生を礼儀知らずで、その指導教員の私を礼儀知らずと決め付けて喜んでいるのだろう。


まあ礼儀知らずでマナー知らずだといわれても、私はなにも怖くないし、言っている相手が礼儀知らずの末廣だから、痛くもかゆくもない。そもそも、互いに敵対関係で、口も利かないし、挨拶もしない。実はずっと会ったこともない。むこうも避けているのだろう。


彼は若い頃、それこそ院生の頃、シェイクスピア学会の総会で、学生会費が高すぎるとか、安くせよとか、院生の立場を代弁して提言をしていたことがあって、それはかっこよかったし、尊敬もしていた。とはいえ、総会でそう提言した彼が、ダブルのスーツを着ていて、あんなスーツを着ている人間に、会費が高いといって欲しくないと言っていた委員もいた(まあ礼儀知らずの人間が、礼儀を説く、今回の提言と同じパタンだが)。それがいまや「目上の人」からの質問にはお礼を言いなさいだと。馬鹿馬鹿しくて、あきれ返るか、まあ心配している。


あと、これはほんとうに未確認なのだが、彼とともにいつもあるセクハラ疑惑はどうしたものかと思う。これも未確認情報なので、彼はその疑惑をなんらかのかたちで、なんらかの場で晴らすべきであろう。下衆ヤバ夫*1にならないためにも。みずからに不本意なかたちでまつわりついている不健全な噂を払拭されることを、これは皮肉でも嫌がらせでもなんでもなく祈っている。そうでないとあなたが「健全なチェック機能を果たして欲しい」という願っている協会が、そして英文学会関東支部が、あなたの存在で健全じゃなくなるから。

*1:末廣の顔は、「アンタッチャブルの山崎」だといわれているが、そういえば、昔、フジテレビの深夜のお笑い番組リチャードホール』で「下衆ヤバ夫」というキャラクターを山崎が演じていたときはそっくりだと思った。ただ私個人としては、末廣の顔は映画監督のデヴィッド・リンチだと思っている。ただし*********になったデイヴィッド・リンチに