台風男


たしかに台風男といわれてもしかたがない。今回9月5日から7日までの北海道旅行は、5日初日から台風の影響が出はじめて、6日の後半は大雨にたたられた。6日には台風が関東地方を直撃している。そして7日は釧路からはたして羽田まで帰れるかどうか、気が気でなかった。正直って釧路にもう一泊かと覚悟したのだが、幸い、飛行機は45分遅れで無事羽田に到着した。


これだけで台風男呼ばわりはない。この7月広島に行ったときも、台風に襲われたからだ。二日目は大雨に見舞われた。そして三日目台風は広島をそれて行ったのだが、交通機関に影響が出た。広島から東京へ新幹線で帰る予定だったが、東京行きの新幹線は、私が広島駅で待っている間、名古屋止まりに変更になった。名古屋から東京間の新幹線が台風の影響で運転を見合わせているからであった。実際、ホームに入っていくる博多発の新幹線の行き先は名古屋になっている(めずらいし行き先だったから、写真にでも撮っておけばよかった)。


私としては名古屋でおろされてから、名古屋・東京間が開通するのを待って、べつの新幹線に乗り換えるよりは、いっそのこと名古屋で一泊しようと考えていた。名古屋駅でホテルはみつかるだろう。特に予定はないが、名古屋でなにかして遊ぼうかとも考えていた。だが、新大阪に到着したとき、名古屋・東京間が開通したので、この列車は、東京行きになりますとアナウンスがあり、途中、徐行があったものの、30分程度の遅れですんだ。


そんなことがあったから、釧路でも同じようなことになるのではないかと、ひそかに期待というか安心していたのだが、案の定、そのとおりになった。遅れは40分で済んだ。釧路では気温が20度を切って、さすがに半そででは寒くて上着を着たが、羽田に着いたら、蒸し暑くて、帰宅した頃には汗びっしょりだった。


だが、わたしは台風もそうだが、いろいろなものを呼び寄せる運命にあるらしい。帰りの飛行機でのこと。満席だったが、私の隣に座ったくそおやじ。眠るのはいいのだが、眠ると大きな咳をして目を覚ます。あまりに大きな咳だから、こちらも目が覚めてしまう。まあ病気とか、喘息もちなら、しかたがないし、病人を責めるのは、まちがっている。しかし、病人じゃない。健康な人間でも、横になったり、眠ったりすると、咳が出てくることがある。それと同じで、この糞オヤジ、寝入っては大きな咳で目長まし、また寝入っては目を覚ましと、4回か5回繰り返して、あとは羽田到着となった。その間、私も眠れなかった。それどころか大きな咳でびっくりしては目を覚ます結果になった。


だいたい、飛行機のこのブロック、だいたい100人くらいの乗客がいるだろうが、おまえだけだぞ、眠っては大きな咳で起きて、周りに迷惑をかけているのは。眠るな。このアホオヤジが。いいか100人いて、お前だけだぞ。ひょっとしたらこの飛行機の乗客全員のうち、おまえだけかもしれないぞ、大きな咳をするのは。


ああ、なんて、私は不幸なんだ。こんな馬鹿オヤジの隣の席とは。私の座席番号が14D。飛行機の座席に13列はないから、結局、13Dということじゃないか。なんとういう縁起の悪い座席なんだ。念のためいっておきたいが、この咳オヤジは、病弱で、ひ弱そうな人であれば、いらいらする私のほうが間違っている。しかし元気そうな、血色も良い、くそおやじなんだ、ああ、なとういう不幸な人間なんだ。私は。


そういえば、ある劇場で私の隣に座った若い男が、大風邪をひいていて、咳をし、鼻水をたらし、くしゃみをしていて、うんざりしたことがある。そんなに病気なら、わざわざ劇場まで来るな。どうやら招待客だったらしいので(評論家とか関係者じゃなくて、出演者の誰かと知り合いとかいう、そんな感じのサラリーマン風の若者だったが)休むことができなかったのかもしれないが、しかし、700人くらい入る劇場で、どうして、こんな大風邪男が私の隣に座っているのだ。たとえ私に風邪がうつらなくても、舞台に集中できないじゃないか、くそ。


まあ招待客なら、金払っていなから休めよといいたいが、逆に、金払っていないから、来ないとまずいということもあるかもしれない。しかし、そういえば近所のシネコンで映画みていたとき、私の後ろに座った、糞オヤジが、これまた大風邪馬鹿で、咳、鼻、くしゃみで、ほんとうにうるさかった。だいたい、そんなに病気なら、わざわざ映画館にくるな。最終日でもないし、招待券があるわけでもないし、そんなにこの映画がみたいとも思えない。病気だったら、家で寝てろ。しかも、がらがらの映画館で、なぜ私の後ろの列に座るんだ。ほかに開いている席はいっぱいあるだろう。


とまあ、私は台風どころか、病人をいっぱい引き寄せる運の悪い男なのである。