研究テーマ


京都での講演会は、その準備もふくめて私には、貴重なものだった。この一年の研究テーマを一応定めておいたのだが、それを変更することなになった。その結果、私は、「キューバカストロ」を批判する「キューバのゲイの知識人レイナルド・アナレス」みたいなものになるかもしれないが、それでもいいと思うくらい、新たな研究テーマに打ち込むことにした。


カストロは人格者だから、そんなに批判すると後が怖いといってくれる人もいたが、私の嫌いなのは「専門家と人格者」じゃ。どちらも大嫌い。だから、私にとって敵じゃないかと思われている人物も、私個人としては、相手が人格者じゃないとけっこう好感をもっている場合もあるので、なんともいえない。


それはともかく帰宅したら荷物が届いていて、イギリスではいよいよオックスフォード大学出版局からトマス・ミドルトンの一巻本の全集が出てしまった。もう10年以上も前から話にはきいていたが、10年たってもなんの音沙汰もなくて、出版されるとは思えなかった。事実、昨年度、ある本を大学院で使ったのだが、その本のなかで著者はミドルトン全集のために、作品を校閲したと書いてあった。そのとき私は、こう書いてありますけれど、ミドルトンの1巻本全集は10年以上前から話があっても出ていない。まああと10年は出ないでしょうと、コメントしてたのだが、それが一年後に出てしまった。


その大きな一巻本には圧倒された。シェイクスピアの一巻本全集とは比べ物にならないくらい専門的な全集である(コンパニオンは間違えて2冊購入してしまった)。またなぜこうなのか、わからない工夫も随所に凝らされていて、ゲイリー・テイラー・グループのあくどさも全面に出ている。これは読むだけでもたいへんなことだと、付属の大部のコンパニオンもめくりながらため息が出た。


今後一年ミドルトンを研究テーマにすべきかもしれない。ああ、またも変更。