艦船模型


昔は、ウォーターライン・シリーズのことを知っているだけで、ずいぶんなマニアだ知る人からは畏敬の念をもたれたのだが、いまは艦船模型ブームだそうで、1/700のウォーターライン・シリーズだけでなく、1/350の艦船模型も新製品が次々と開発され、活況を呈しているようだ。


私は、どちらも作ったことはないが、1/700の模型というのは、小さなものである。いっぽう1/350の模型というのは、たんに大きさが2倍になっただけと思うなかれ。2倍であることはそのとおりだが、立体であるので、8倍とまではいかなくても、それに近い、大きさの印象を受ける。


来月号の『モデル・アート』誌の特集は、なんと「こんごう・あたご型護衛艦」。まあ運の悪いことに、国民の敵となった「あたご」を作ることになろうとは。実は、2008年1月下旬に発行された『モデル・アート』2008年3月号(No.744)は、背表紙に3月号を意味する3という数字を印刷するのだが、まちがって2としてしまうという、大ミスをやらかしている。2008年2月下旬発行の4月号には背表紙訂正用シール(3という数字のシール)がつくのだが、まあこのところ不運つづき。呪われているのでしょうか。


私が艦船モデルをつくるとしたら、当然自衛艦のあたごが、漁船を真っ二つにしているところを作る。面白がっているのではない。ジャガーノートじゃあるまいし、漁船の雑魚どもは避けて通れ、あるいは押しつぶされろといわんばかりの、傲慢な自衛艦の悪辣さを告発するためである。ただ、残念ながら、私には、その技量がないのであきらめなければならない。そもそも艦船模型をひとつもつくったことがないのだから。まあ根性のあるモデラーがいてくれないかと思うが、モデラーはマニアックであっても根性だけは絶対になさそうだから、だめだろう。


それでも艦船模型を作ってみようかという気持ちもあって(まあ、どうせ押入れにしまった終わりだろうが)、昨年1/350の艦船模型を予約した。それが届いた。1/350のノアの方舟(ミニクラフト(アメリカの模型メーカー)製)。


1/350の艦船模型だから、それなりのヴォリュームはあるのだが、でも戦艦大和よりは小さい。いや、ノアの方舟戦艦大和より大きくなければいけないという理由もないのだが、そもそも、なぜこの形で、なぜこのサイズなのか。


箱には聖書の記述に基づくと書いてあるのだが、説明書には、聖書のどこを読めば、方舟の形状と大きさがわかるのかは、なにも書いていない。なんの根拠もないのでしょう。


どんな形のモデルかというと、大きな木造船。エンジンはない(その時代、エンジンなど発明されていない)。帆船でもない。ただの強大な木造の船。手すりもない(専用エッチング・パーツなんか、あるかい!)。巨大な船の内部の何層にも分かれている船室に、動物を入れる柵みたいなものを、ちまちまと作りつけるだけ。まんなかから、ぱかっと割れて、動物用の柵がみえます。でもそれだけ。操舵室も、エンジンルームも、客室もありません。帆も武装もレーダーも手すりもアンテナ線もロープも、碇もなにもありません。まあノアの方舟だから。


ノア本人と動物が数体付属している。これだってノアの家族全員とか、動物もたくさん用意されていたら、作るのはたいへんだけれども、壮観なはずが、ノアと数体の動物だけ(当然1/350スケール)。


はっきりいって、後悔している。作る元気もない。作りたいとも思わない。おもちゃだ。いや、デパートで、ノアの方舟のおもちゃ(外国製)をみてみたが、箱舟らしきものに、オーヴァーサイズのカラフルな動物たちがいっぱい乗っていて、けっこう楽しそうで、子供にあげたら喜ばれるかもしれない。だからこの艦船模型ノアの方舟、おもちゃ以下である。


ちなみに昨年には1/124という中途半端なサイズの、だか艦船模型としては大きな「シービュー号」を予約した。「シービュー号」といえば、稲垣足穂にまでいたる物語があるのだけれども、それはまた、予約品が届いてからの話に。