ゴールデン・エイジ1


昨日15年ぶりに会ったX氏(教授)は、すでに私よりも早く90年代に煙草を止めたと聞いて驚いたというか、その賢明な判断には頭が下がった。私はX氏よりも遅れて、ようやく2000年になって止めた。


X氏によると、喫煙が自分の健康を損なうことが実感できて、禁煙が実行できたとのことだが、私の場合も、喫煙は、自分には合っていないとわかり止めることになった。もっと早く決断すべきだったのだが。


しかしそれ以前は軽い煙草にしようと努力はしていたし、一日一箱は越えないようにしていたのだが、実はパイプも吸っていた。パイプ煙草は紙巻煙草と違い、ガンになるような悪影響はないというのだが、まあ臭いがきついので、公の場ではあまり吸えない。


使っていたパイプはサンドブラスト(シェル)仕上げの、ダンヒルの黒いシェルブライアーだったが、ふつうのつるつるのパイプではなく、ざらざらのパイプの手触りをけっこう楽しんでいた。


しかしパイプを吸っていたとしてもダンディズムとか、coolというのではない。まったくそれとは程遠い。母親からは、パイプはほんとうにまったく似合わないから、一刻も早くやめたほうがいいとしょっちゅう言われていた。


パイプ煙草はむつかしい。長い時間もたせることがむつかしくて、神経をつかってしまう。ゆったりとした気分でリラックスするのが目的のパイプ煙草も、けっこうストレスがたまるものだった。メンテナンスもむつかしい。私のパイプは真っ黒なものだったから、いい加減なメンテナンスでも、外見上はわからなかったが、木目の入っているようなパイプ、色の薄いパイプだったらそうもいかないだろう。私のパイプ喫煙時期というのは、そんなに長くはなかった。


パイプ煙草としては、Sir Walter Raleighという銘柄のパイプ煙草を愛用していた。いまもあるのかどうかわからない。ネットで「Sir Walter Raleighと煙草」というかたちで検索してみても、歴史上、イギリスにはじめて煙草をもたらした人物ということで、そちらの項目がずらりと並んで、かんじんな情報に行きつけない。


ちなみにSir Walter Raleigh(銘柄のほう)は、たいていデパートで買った。「このウォルター・ローリーをください」というと、いつもデパートの店員に、「ああ、ウォルター・ラーレーですね」と言いなおされた。とくに店員のまちがいを、私は訂正しなかった。いわれるたびに、自分の発音でよかったのか、自信をなくしていたからである。