Poor Things

小説の話じゃありません。

信ずるか信じないかはあなた次第です。


会議の内容を公表するのは、違法行為かもしれないものの、まあ提案について、その提案を処理するのは私ではないし、またどう処理されるかも、関知しないので、提案の感想を述べるだけであり、またどの会議かも説明しないし、これはその会議あるいはその会議が属する機関なり団体の公式な声明でもなんでもなく、また事実誤認があったとしても、意図的でないことを宣言したうえで、責任はとらないので、ご承知おきを。


提案1日本英文学会の新体制への移行を確認する会議での席上、副会長を置いてはどうかという提案があった。どうなるかは、わからないし、それを決議するのは新体制でのことなので、ここでそういう提案があったと語っても問題ないだろう。


べつに変な提案ではない。ただ、わからないところがいろいろある。


まあ文科省の圧力により、学会の改革をしなければいけなくなったのだが、新体制では評議員(任期4年)が7名となり、その評議委員会で、理事7名を選任し、理事7名からなる理事会で代表理事を会長とする。理事の任期は2年。


理事会のなかに会長となる理事のほかに、副会長となる理事を置くというのは、へんな提案ではない。いままでも会長の代行する理事は存在していたのだから。


副会長を置く理由というのは、基本的に次期会長という扱いとなり、こうすることによって、会長とは異なる支部出身の理事が副会長となり、ひとつの支部が会長を独占することなく、いろいろな支部に会長がゆくということらしい。


これは関東支部が繰り返し主張している、関東支部に一極集中するのを避けるということだが、それはそれで、もっともな理屈である。だが、他の支部が関東支部の一極集中をほんとに嫌っているのかどうかわからない。むしろそれを望んでいるのではないか。会長になる理事が、その出身支部に、負担をかけることもある。関東支部以外の支部は、支部の負担が大きくなることをなによりも恐れているのではないか。このあたりはすりあわせが必要であり、関東支部の一極集中を避けるという主張も繰り返されると、責任の逃れの馬鹿のひとつおぼえということになりかねない。民主的な選出方法が確立されれば、会員あるいは各支部が望むなら一極集中でも問題はない。


あと理事の任期は2年だが、副会長が次期会長になるとすると、次期会長は都合4年間理事として留まることになる。理事の再任はできるのだが、そうなると他の理事だって再任される可能性もあり、全員が再任という事態も可能性としてはある。まあ理事は7人しかいないので、できるだけ多くの会員が理事として働く体制が望ましいのだが、まあいいか。


またアメリカ文学会でこの方式をしているというのは、それはそれでいいのだが、もちろん少ない時間なので十分な理由説明はなくていいのだが、関東支部一極集中を避けるとういこととアメリカ文学会もしているからというのは、子供に対する説明でしかない。そもそも副会長は、どういう職務分担をするのか、7人しかいない理事のなかで、どういう位置づけになるのか。再任はさまたげないとしても、副会長に選ばれた時点で、任期4年が確定してしまうのはどうなのか。


提案自体は、無理な、荒唐無稽な提案ではない。しかし、関東支部では長時間の審議をしているらしいのだが、それがこれかい。その場の、思いつきなら、それはそれでよい。私は、その場の思いつきという提案をもっとも重視する。たとえ、実現性が低くても、なにか可能性がみえてくるからだ。この副会長案は、そうして思いつきの提案ではなくて、長時間の審議のはての提案らしい。たとえすぐに提案が承認されても、他の案件で長時間の審議が続けば、全体として長時間審議したことになるのだ。それがこの提案か。


くりかえすが、へんな提案ではない。次の、新体制の評議員会でこの問題は審議されるだろう。提案が通るかどうか、それは私はいっさい関知しないことである。とはいえ、承認されるかもしれない提案に対して、公表されるまえに、あれこれいうのは、ルール破りのことかもしれないのだが、ルール違反がなんぼのもんじゃい。私は真実しか言わないことにすると同時に、信ずるか信じないかはあなた次第としておく。


提案2 もうひとつの提案:全国大会に開催支部会員の研究発表の部屋を設けること。開催大学から一部屋借りれば、二日間でかなりの発表ができるというもの。


これはその場の思いつきとしては、すばらしい提案である。しかし荒唐無稽すぎて、却下されるしかない提案でもある。


理由。この提案は、学会の全国大会で研究発表の部屋を一部屋増やすことが、どれだけたいへんかわかっていない。そもそも学会の研究発表のシステムがわかっていない。


一部屋余分に設けるということは、そこに張り付く大会準備委員を一人増やすということである。大会準備委員は、シンポジウム、研究発表、いずれの場合も、一部屋に一人張り付くのである。部屋の管理とか運営のためではない(管理運営は、基本的に開催校の大会準備委員が行なう)。では学会の大会準備委員は何をするのか。いやしくも学会である。その研究発表は、すべて審査をパスしたものである。学会の大会準備委員は、みずから審査してパスさせた研究発表の場にいて、その発表内容を聞き、審査をパスした研究発表に値するものかどうかを確認*1し、あとは研究発表会場の聴衆の数、発表プロセス、質疑応答などについて観察し、その結果を、大会後の大会準備委員会で報告するのである。


そうなると部屋をひとつ増やすということは、最低でも委員をひとり増やすことになる。それから、もうお気づきかもしれないが、たとえばその部屋が一分野だけの研究発表ならばその分野が専門の委員がひとりいればいい。しかし、支部会員の発表となれば、分野は三分野から四分野におよぶ。ということは、研究発表の内容に対応した専門分野の委員を4人くらい増やす必要がある。なにかむだじゃないのか。


あと関東支部は、いまなお若手の会の気分をひきずっていて、これは大問題なのであり、この若手の会の気分は、学会をつぶしかねないガンともなりかねないのだが、まあ開催支部の研究発表は、私が聞き違えたのかもしれないが、大学院生がするらしい。大学院生の発表はレヴェルが低いものになるかもしれないがと、支部代表からも説明があったが、たぶんその心配はないだろう。博士課程の院生の発表は、おそらく最先端をいくものであって、それは聞くに値する。ただ、要は、開催支部の院生の発表に、審査の際、手心を加えてもらえないかということかもしれない。


私は現在、大会準備委員会における研究発表の応募に対する審査については知らない。これは調べるべきかもしれないが、とりあえず、話をするめると、もし匿名審査なら(つまり応募者が誰かわかならいかたちで委員が審査する場合)、手心を加えるということはできない。またそもそも手心を加えるということ自体、研究発表の応募から審査から口頭発表へのプロセスを揺さぶることであって、のめない。審査は該当分野の委員が複数で行なう。そのため支部というカテゴリーはないから、それぞれの分野で審査して、あとは数の調整を行なわねばならない。支部の英文学分野の合格者が10名いたら、それでもう一部屋パンクしてしまう。ああ、めんどうくさい。いや、そもそも開催支部の研究発表の部屋をもうけること自体、不可能なのだ。そんなに関東支部の部屋を設けたかったら、一部屋休憩室でもつくって、そこにお茶と支部長が好きかもしれない虎屋の羊羹でも置いておけばいいのだ(虎屋はほんとうは京都か)。そのほうがよほど会員のためになる。


さきほどの副会長案と異なり、開催支部の研究発表の部屋を設けるというのは、実現不可能な案である。現在のシステムを根底から覆さない限り、ありえない。


ただ、問題は、以下のことにある。


もしこれがその場の思いつきの案なら、面白いが、実現性は薄いで終わりだが、これを関東支部で長時間審議したとしたら、どうなのだろう。


もし関東支部の執行部に、たとえば学会の大会準備委員の経験者、あるいは現委員がいれば、この案の不可能性はすぐにわかるはずである。逆にいえば、執行部に、大会準備委員経験者、現委員がひとりもいないとしか思えない。いや、私は大会準備委員というのを経験していないが、学会と大会のシステムくらいはわかる。となると、学会と大会のシステムについて多少なりともわかっている人間がひとりもいないのか。


となると、この執行部の層の薄さは、どういうものだろう。関東支部の執行部は、なにも理解していないぼんくらばかりで、ただの烏合の衆だ。支部長の報告によれば、支部の執行部は、45歳前後の人間の献身的な努力によって動いているらしく、審議も長時間に及んでいるらしいのだが、その結果が、これかい。もし学会の大会準備委員がいても、ぼんくらである。全体として烏合の衆だ。この場合、被害者は、支部代表だろう。これは本気で同情する。ろくなブレーンがいない。いるのはノーブレーンだけだから。



関東支部の執行部を、烏合の衆、ぼんくらと、書いたけれども、ほんとうは、そんなことは思っていない。45歳以外にも、すぐれた人材が多いことは、いうまでもないからだ。いやそもそも被害者は関東支部の執行部ではないのか。ほんとうに、あなたがた、ぼんくら、いえ、45歳、いえ、関東支部の執行部は、開催支部の院生が研究発表をするという案を考えたのですか。あなたがたは、支部大会、あるいは全国大会において、トイレ以外、英語を使うのを禁止するという案を、もちろん冗談でも審議したのですか。私にとっては、今の問いは、答えがイエスでもノーでも怖い。あと開催支部の院生が研究発表するというのは、ゲリラ的に、英文学会の全国大会とは別に、一見、英文学会の研究発表の部屋にみせかけて、院生の研究発表の場を設けるということですか。だったら、そんなマネは、面白いから、是非やってほしい。英文学会なんかぶっつぶせ。どうせ来年は私は英文学会とは関係なくなるだろうから。


またそうでなければ、どうか、狂騒には巻き込まれないで欲しい。詐欺師には、誇大妄想狂には騙されないでほしい。若手でももう45歳だ。分別はあるでしょう。哀れなるものにはならないで欲しい。

*1:なぜなら審査は、前もって提出された発表要旨を対象とするからであり、実際の発表原稿を審査するのではないから、この確認は必要である。