CM二題

テレビでぼんやりCMを見ていたら、おかしいと思うCMがふたつあった。



味の素のコマーシャルで、味の素はさとうきびから作られる――サトウキビを発酵させてからつくるというメッセージが入っている。それは正しいことなのだろうが、だから味の素は「化学調味料ではございません」とでもいいたいのだろう。実際、「化学調味料」という言葉は日常的に使われているのだが、業界では「うま味調味料」というそうだ。しかし、だからといって、「うま味調味料」は依然として化学調味料であることに変わりはない。また問題は、「うま味調味料」だろうがなんだろうが、そうした「うま味調味料」の使いすぎ、アミノ酸投与過多がいかに国民の味覚と健康を損ねているか、たとえ企業が認めなくても、因果関係が証明されなくとも、国民はみんな知っている。


テレビのCMでは、味の素がサトウキビから作られていると知って、サトウキビをかじる映像が流れていたが、外国人がこれをみたら、味の素は、サトウキビからつくる「砂糖」と思うかもしれない(これは結局食品偽装だ)。味の素は、サトウキビを発酵してから、化学処理して抽出される「アミノ酸」。くだらないごまかしだ。「味の素で頭がよくなる」という根も葉もないキャッチコピーで問題になったこの企業の体質はいまもかわりはない。



もうひとつはJT


ロンドンでは、ビルから出るとき、先に行くものが、あとから来る人のために、ドアを押さえてやるというのが習慣になっているというメッセージが流れ、映像を見てみると、ドアを押さえて、後から来る人を先に行かせる人は、"Thank you"といわれて、"You are welcome"と応答している。


え、イギリス人が"You are welcome"というのか。つまり「どういたしまして」という意味でイギリス人が"You are welcome"というのだろうか。辞書で調べてみたら、この意味の"You are welcome"というのは米略式と注意書きしてあるものもある。そう、イギリス人は"Thank you"といわれて"You are welcome"なんていわないよな。


とはいえ最近、ロンドンに行っていないので、なんともいえないところがある。イギリス英語は、アメリカ英語に侵食されて、つまりどんどんアメリカナイズされていくから、最近ではイギリス人もふつうに"You are welcome"といったりするのかもしれない。


だから確かなことはいえないのだが、中国から毒入り餃子を輸入したJTのことである。このコマーシャルもいい加減な虚偽CMじゃないのか。アメリカかどこかで撮影して、ロンドンだとみせかけているのではないか。あるいは、ロンドンであっても、"Thank you"と言われたら"You are welcome"だろうとアメリカンな基礎英会話の知識しかないバカ宣伝会社かJTが、イギリス人に無理やり"You are welcome"と言わせているのかもしれない。嘘つき会社にふさわしい嘘コマーシャルである。