両親のよいところ


これはうろおぼえで違っているかもしれないし、裏をとっていない話なので、責任はもてないのだが(あるいはけっこう有名な話で、私だけが詳しいことを知らないという可能性もあるのだが)――バーナード・ショーの辛辣な発言についてである。


あるとき、女優が劇作家のバーナード・ショーに言い寄って、「先生のような頭の良い方と、私のような美人が結婚したら、さぞかしすばらしい子供ができるでしょうね」と語ったところ、ショーはすかさず、「いえ、私のような醜い男と、あなたのような頭の悪い女が結婚したら、どんなにひどい子供ができるか、わかったものじゃない」と語ったという。


ミソジニーも入っているのだが、それを無視しても、ここには真理があるように思われる。つまり親は、自分の子供に、自分たちのよいところがすべて受け継がれると思いがちだが、その逆もあって、子供には、両親の悪いところがすべて受け継がれるとこともある。あるいは親は、子供に、自分たちのよいところだけを受け継いで欲しいと思うのだが、結局、悪いところもすべて子供は受け継いでしまうのであって、結局、子は親の、ゆがみなき鏡なのである。


私の姪が不登校になった。昨年の夏休み明けから休みがちだったのだが、先月のはじめまでには完全に不登校状態になった。小学生である。義務教育なので、大学とは違って出席がなくても卒業できる。だからというわけではないが全く学校に行っていない。


明確な理由は本人は言わないし、両親も学校側も、その理由(たとえばいじめがあるとか)を把握していない。ただなんとなく理由は想像できる。それを思うと同情する余地もあるのだが、同時に、わがままで楽をしたい、めんどうなことは嫌いだという気持ちも垣間見えて(それも一種の子供の精神病なのかもしれないが)、また当然、私の子供ではないので、勝手にせよという気持ちになっている。


最近は、だんだん可愛げもなくなって、そして不登校のくせに威張っている。また親もなんとなく子供を恐れているところもある。先月、姪に、クリスマス・プレゼントをあげようと思い、バッティングするといけないので、どういうプレゼントにするのか親に尋ねたところ、もうクリスマスプレゼントはあげたという。


でも、クリスマスまでまだ10日以上もあるのに、どうしてかというと、子供が早く欲しいというからという。クリスマス前にクリスマス・プレゼントを欲しがる姪も、どうかしているが、いくら欲しがるからといって、クリスマスまで待てと言えない親もどうかしている。まあ自分の子供でないから、なにもこちらからは批判めいたことは言わないが、もし自分の子供で、妹夫婦にあずかってもらっていたら、ただちに引き取るだろう。彼らに子供のしつけと教育は任せられないからである。


また原因不明で不登校になったのも、ある意味、親をみていれば、よくわかる。つまり父親と母親べつべつにみると、それぞれそんなに問題のある人間とは思われず、誰でもそうであるような長所と欠点をもっているが人間的に問題があるわけではない。しかし、そのふたりの小さな欠点でも、それが合体すると、欠点が倍化して、問題のある性格となる。バーナード・ショーのように醜男でも才能があれば問題ないし、彼に言い寄った女優もまた頭が悪くても美しかったら問題ない、しかし醜くて頭も悪い人間だったら、どうなるのか。この親にしてこの子あり。親の選択には注意を払わなければいけないことがよくわかる。