私が軍用機ファンをやめたわけ

本日、テレビ東京の午後の映画でアメリカ映画『インターセプター』(Interceptor、1992)を放送していた。昔、深夜放送で見た映画で、まあB級アクション映画なのだが、飛行機とりわけ軍用機ファン(かつての)にはたまらない映画だったの、思わず、見入ってしまった。


まずF117が出てくる。離陸するところと墜落するところ(最後のほうの空戦)は特撮のようだが、格納庫や滑走しているF117ならびに飛行中のF117は本物であって、興味深いものがある。トルコで実験中の新鋭機(ヴァーチャル・リアリティ・システムで操縦できる新鋭機(架空の))が事故で失わたため、同型機2機と事故を起こしたテストパイロットが本国に帰るところ、テロリストの集団が輸送機に侵入してくる。主人公のテストパイロットは、からくもテロリストの目を逃れ、逆に反撃に出る。まあ飛行中の巨大な輸送機を舞台にした〈ダイ・ハード〉物である。


この巨大輸送機(世界で最大か、二番目に最大の機体)がC5ギャラクシーで、その内部の様子がよくわかる。基本的に物資輸送だが、機体の後方に人員輸送用のための座席セクションがあって、そこだけふつうの旅客機の機内のようになっているのは面白い。主人公のテストパイロットは最初、そこにいたので、テロリストに気づかれなかったという設定。


空中給油のシーンがある。KC135(昔のボーイング707と同じような大きさ)とかKC10(こちらはエアバスと同じような大きさといえば、巨大さはわかってもらえるだろうか)とC5(これはジャンボジェットよりも大きい)との給油シーンは、大型の飛行機による給油シーンなので、迫力がある。給油の時には、給油機が大きな竿のようなブームを繰り出し、それを相手の機体の給油口に突き刺し、大量の航空燃料を送り込む。テロリストたちは、この給油ブームにもぐりこみ、ギャラクシーの燃料タンクに滑り降りる。そんなことができるのかと驚いたが、もちろん、できるはずがないとわかって、安心した。実際の給油ブームは人間がもぐりこめるほど太くなく、また給油口も大きな燃料タンクに直結しているわけではないので、あくまでも架空の設定。


しかしF117は映画では人気のある機種で、『エグゼクティヴ・デシジョン』という、これもB級アクション映画だが(ジョン・レグイザモハル・ベリースティーヴン・セガールらが出ている)、そこではF117の後部に乗り込んだコマンドが、ハイジャックされたワイドボディ旅客機の腹の部分に穴をあけて、テロリスト制圧のために潜入していた。F117の後部に人間が乗れる余裕はないし、絶対に不可能な設定だった。またスティーヴン・セガールが、いよいよこれからというときに、あっという間に死んでしまうのも驚きだったが。


ちなみになぜF117というのか、議論になったことがある。現在、アメリカ空軍で実線配備されている最新鋭機はF22ラプターだが、一応、航空機には二桁の番号が振ってある。なぜ三桁なのか。


私はこれはセンチュリーシリーズの延長線上にある命名法だと考えている。センチュリーシリーズは、F111まで確認されている。いまではF4ファントムと呼ばれていた機体も、以前、空軍では一時的にF110と呼ばれたことがあった。これは私の子供の頃のことだがよく覚えている。


一応センチュリーシリーズで実戦配備された戦闘機を並べると、F100, F111, F102, F104(航空自衛隊も使っていた), F105, F106, F110( F4ファントム)、F111である。欠番は、制式採用されなかったか、計画のみで終わった機体で、現在ではすべて判明している。


以下、航空専門家ではなく航空ファンとしての呼び方で並べておくと

F111 アードヴァーク

F112 ロッキードの高速偵察機SR71の派生型で計画機のYF12がこれにあたるはず。

F113 13なので縁起が悪いので欠番。

F114 これが比較的最近退役したF14トムキャットである。

F115 これが現在、自衛隊でも使っているF15イーグル。

F116 これがアメリカ空軍ならびに世界各国で使われているF16ファイティング・ファルコンである。


F16が採用される前には、ジェネラル・ダイナミックス製のYF16とノースロップ製のYF17コブラとがコンペティションをして制式採用を争っていた。結果的にはYF16が空軍に採用されF16となったのだが、YF17も優れた戦闘機であったので、これを海軍で採用することになり、主契約者もノースロップからマグダネル・ダグラスに変わった。そして私たちの前に精悍な外形に変貌をとげたYF17が現れ、これがF18ホーネットとなった。


このとき、私たちはYF17が採用されたのに、どうしてYF16がF16となったのと同じように、YF17もF17とならなかったのか、不思議に思うべきであった。まあF18はYF17の面影はあるものの、かなり変化したし、主契約会社も変わったので、新たにF18とつけたのかと、誰もがそう解釈していたふしがある。しかし、そのときすでにF17というか、センチュリーシリーズではF117が存在していたのではなかったのか。


したがって
F117 これが現在のF117ナイトホーク。

F118 これがYF17コブラから発展して海軍に採用されたF18ホーネット

F119 これは謎の機体であり、現在存在が確認されていない。これがF117ではないかと言われたこともある。つまりF117はYF17、そしてこのF119がF117。しかしそうなるとやはりまぎらわしいし、システム上の一貫性もない。わたしはこれは実験機X29だと考えている。X29はグラマンが開発した前進翼実験機で、当時はけっこう話題になった。日本のハセガワからプラモデルも発売されたことがある。このX29は実験機なので、エンジンなどはF18のそれを流用していた。F18の次の機体ということになる。また29を分解して2=(1+1)&9となって、これは119ではないか。とはいえ、これは未確認の秘密戦闘機だったのかもしれない。

F120  これはノースロップのF20タイガーシャーク。『エリア88』で主人公シンが最後に乗っていた戦闘機。

F121 これはイスラエルから購入したクフィール戦闘機(フランスのミラージュ戦闘機のイスラエル版発展型)にF21と命名したもの。トップガンにおいて仮想敵役をするためのものであった。

F122 これが現在の最新鋭のF22ラプターとなる。

F124 これはラプターと争って敗れたノースロップのYF23となる。


したがってここまで、センチュリーシリーズの命名法は生きていると私は考えている。


で、F117だが、1988年、はじめてこの謎のステルス戦闘機の姿が公表された時の衝撃を、私は忘れない。こんなものが空を飛ぶのかとあきれたし、その醜い姿は、これまでのどのような軍用機とも似ていなかった。強いていえばカブトガニに小さな翼がついているような、そんな面妖な機体である。いやもっといえば、そのカブトガニの部分がポリゴンであるといえばわかってもらえるだろうか。


当時のステルス理論からすると、こういう形になるのだが、それにしても、これが未来の軍用機の姿なのかというと、およそ明るい未来とは思えなかった。私は、軍用機ファンを辞めた。いまから思うと、私が軍用機ファンであったのはベトナム戦争から湾岸戦争の間の、アメリカが大きな戦争に加担しなかった、比較的(あくまでも比較的だが)平和な時期であったことになる。


なおこの記事を書くにあたって、Wikipediaで調べたところ、2008年4月にF117は全機退役したことを知った。F117が切り開くかにみえた未来は、意外と短命であった。