ワルキューレ作戦

現在、トム・クルーズが主演映画『ワルキューレ』の宣伝のために来日しているのだが、ワルキューレ作戦については、もう誤解が生じているようだ。


もちろん正しく記述しているサイトもあるのだが、また映画も、そのへんはまちがっていないのだが、どうもヒトラー暗殺計画のことを「ワルキューレ作戦」と誤解しているサイトもけっこう多い。


ちょうどフランケンシュタインの怪物が、いつのまにか、生みの親の名前「フランケンシュタイン」と呼ばれるようになったように、ワルキュール作戦とは、ヒトラー暗殺計画の暗号名であるかのように扱われ、「ワルキューレ作戦」あるいは「ワルキューレ」が一人歩きしそうな気配である。いや、そうした事態はすでに進行中だったのかもしれないが。


ワルキューレ作戦とは、たとえばヒトラーが暗殺されたというような、国家の存亡に関わる大事件が生じたときに、国家機能を一時停止させ戒厳令を敷いて軍が一時的に国家を統率管理する作戦である。ヒトラー自身、この作戦の立案を、ドイツ予備軍司令部に依頼、作戦時には、予備軍司令官が全権掌握することになっていた。


ヒトラー暗殺を試みたのは、この予備軍司令部に勤める情報将校シュタウフェンベルク大佐(映画『ワルキューレ』ではトム・クルーズが演ずる)だが、ヒトラーの死が確認できないため、予備軍司令部では、ワルキューレ作戦をすぐに発動できなかったが、最終的に発動する。しかし同時に、その時は、ヒトラーは生きていたわけで、クーデターは1日で終わりを告げることになる。その間の、錯綜した状況と暗殺陰謀派の行動は、まあ映画をみてもらうしかないが、くりかすとワルキューレ作戦は、ヒトラー暗殺作戦ではない。