メバル


昨日は、帰りに近所のスーパーに立ち寄ったら、時間も遅いため、売れ残り品が、半額になっていた。鮮魚コーナーでは、めばるが半額になっていたので、ついつい購入してしまった。


メバルというと、子供の頃、よく食べていた。母親がメバルの煮つけが好きだったということもあるが、メバルは、そもそもおいしい魚である。私は学生時代に、自炊を始めたとき、近所のスーパーに買い物に出かけ、最近、食べたことがないメバルでも食べようかと探したところ、その値段をみてのけぞった。私は自分の愚かさを実感するしかなかったのだが、それまで、わたしはメバルを、おいしい庶民の魚だと思っていた。いつも金に困っている我が家の食卓にのったものが、まさかこんな高級魚だったとは、夢にも思わなかったのだ。


子供の頃、母親といっしょに近所に買い物の行ったときのことを思い出す。そのとき魚屋は母に、じつに愛想がよくて、魚屋に好かれているという印象を持ったのだが、そうだろう、めばるといった高級魚をよく買ってくれる奥さんというのは、上得意じゃないかい。


結局、自炊していた学生時代に、私はメバルを食べたことはなかった。あんな高い魚、買えるかい。メバルについては、さらにいうと、私が母親と暮らすようになってから、メバルが食卓に出ることは、ほとんどなかった。メバルは、私の子供のころ、高価な魚だったようだが、いまは昔よりももっと高価になった可能性がある。とはいえ、もうひとつの思い出は、母親が癌の手術から回復して退院したその日、糖分・塩分もカロリーも少ない病院食に学ぶものがあって、また当分、食生活に気をつけたほうがいいとうことで、今日はメバルが食べたいと言い出したことを覚えている。母は、そのメバルを野菜といっしょに薄味で煮るのだが、メバルと言えば煮付けと思っている私は、こんなお湯で煮ただけのようなメバルは、メバルの味を台無しにしてだめだと言ったのだが、食べてみると、薄味になってもメバルはおいしい。むしろ醤油味にしないほうが、本来のおいしさがわかってよいことを発見した(鍋にしてもいい)。


とはいえ、1尾購入したメバルを、私は煮つけにして食べる。煮つけには野菜をつけるのだが、ニンジンとかタマネギを入れ、またピーマンなんかもいいと知ったので、それを入れ、さらにエリンギのようなきのこ類も入れて、甘く醤油味にする。また食べたあとの骨は、お茶につけたり、吸い物の具にして、しっかり味わう。さらに余った濃いだし汁には、生卵を落として煮立て、半熟になったそれをご飯に載せて食べる。メバルは高級魚だが、私は、しっかり庶民の食べ方をしている。