Day 3

1授業


本日から変動期に入る。


ひとつは教室が変更になったことだ。


教室のやりくりというのは、なかなかむつかしくて、どの大学でも四苦八苦だろうから、それはしょうがないと思う。昨日までは2階の教室だったが、今回は1階の教室となった。


小さめの教室で、むしろこちらのほうが講義はしやすいようだったが、本日、最初にDVDを見せる。実は、こちらからもDVDを1本持っていったのだが、それだけでは授業がだれるかもしれないと思い、配布したプリントのなかに具体的な分析例として載せてある映画作品(どれも有名な映画ばかりだが)の一部を見せることになった。そこで前日、近くのレンタルビデオ屋さんから、DVDは借りられないかとTAのMさんに聞いてみた(もちろんレンタル料はこちらで払うということにして)。Mさんは、手配してくれたおかげで当初に予定にはなかったDVDをみることができた。


最初にみたのはアントニー・ミンゲラ監督(合掌)の『イングリッシュ・ペイシェント』。冒頭から最初の部分において、乾いたもの(砂、火)と湿ったもの(水、液体)との二項対立によって映像が組織されていることを確認した。この部分、こうした構造分析的考察にも適していると同時に、ほかの分析にも使えそうなので、すこし長めにみた。予定では10時45分に終わるはずが、11時近くまでなった。


それはそれでいいのだが、映画が終わったあと、今度はマイクが使えなくなった。そんなに大きな教室ではなので、肉声で全体に声は届くのだが、私のアーティキュレイションの悪い話し方(ノウイングがムウにまちがえられた)と、話の内容がめんどうなこともあって、マイクで話したほうが、話す側も、聞く側も負担がないと思うので、マイクがあればマイクを使うことにしている。


で、マイクで授業をしようと思ったら、マイクが使えない。同じ危機でDVDとマイクも使えるときにはトラブルが多くて、私も本務校の授業でDVDを使うことが多いのだが、そのとき音が大きくならなくて、原因がよくわからず困った覚えがあるが、マイクをはずすとトラブルは解消した。それと同じで、マイクとDVDとはトラブルの原因になる。


事務室からも人を呼んで機器を調整することになるのだが、その間、授業もするわけで、事務の方に授業内容を聞かれるのは恥ずかしいしぞ。結局、原因不明。午後にはなんとかするということで、マイクは使えず。午前中の授業は終える。


昼休みは、TAのMさんと、もとTAのTさんと、英文研究室の助教/助手ではないのだが、それとほぼ同じ仕事をしている優秀なMさんと、3人で食堂へ。先生は会議があって食事に出られないとのことだった。今回の授業が精神分析であったこともあり、エビが食べられらないMさんに対して、なぜなのか、本人も原因を把握していないこともあって、これは無意識のトラウマではないかと話が盛り上がる。私としてはポー君についても、無意識との関係(あるいは意識との関係)から話を聞きたかったのだが、それは時間がなくてできず。後日に持ち越すことに。


変動のその2。本日の授業は、精神分析フェミニズム。ところが私がまちがえて、明日のおこなうジェンダー批評のプリントを本日3日分とプリント本体に記載したため、明日の分も本日配られることになった。自分のミスに気付かずに、本日、これだけの分量の話をするのは無理だとわかり、残りは明日まわすことにする。しかし、実は、私のミスで、明日まわすと宣言したのは、明日予定していた授業なので、結局予定通り。授業中、何度も、本日予定通りにできなくて、すみませんと謝っていた私は何だったのか。


すべてしなくていいと考えた(実は誤解から)私は、最後にもうひとつのDVDを。これはドリームワークスがつくったアニメ『アンツ』。このなかでアリたちがインセクトピアと呼んでいる伝説の場所に、実際に赴くところがある。夢にまで見たアリたち、あるいは昆虫たちのユートピアは食べ物が潤沢にあり、美しく彩られたまさにドリームランドなのだが、よく見ると、そこは都会のマンションかなにかのゴミ捨て場。そこで典型的な「異化」の例として利用できる。わたしたは、どんなに汚い場所でも、美しい場所にみえる時と場合、状況、視点があること。逆に、ユートピアと思われているところは、ひとかわむけば、あるいは見方を変えれば、ゴミ捨て場のような不潔で汚いところであること。この両方の認識異化を可能にする、けっこうすばらしい映像である。



2


前日と同じで、コンビニとユメタウンでショッピング。食料と必需品を買い込んだ。
夜はDVD。実はあいている時間を利用して翻訳をするつもりであった。真剣に翻訳作業を考えていた。だから、放置されるほうが嬉しい。ただし、ホテルの一室で、コンピュータを使って文章を書くのはいいが、また本を読むのもいいが、本を見ながら翻訳をするのは、テーブルとか光の具合でむりだとわかった。残念である。まあDVDを毎日1本みるしかない。本は読んでいる。


放置状態:ところで、英文科の先生からもいわれたのだけれども、厚く接待しないで、ほとんど放置状態ですみませんと謝られたが(べつに陳謝するとかそういう重い話ではないが)、いろいろな案内なりガイダンスなり情報はいただきたいが、今回は2回めなので、こちらも事情はよくわかっている放置しれもらっていいし、そうでなければ、なぜ2回目の人間を雇うのか、意味がないと話しておいたので、放置されても全然気にならない。


もともと放置されるのが好きだということもある。仕事の材料ももってきた。むしろ規則正しい生活を送り、規則正しく授業をし、授業後は、規則正しく自分の仕事をする。これは私の理想的な生活である――まったくこの生活ができていないので。


ちなみに、昔、関西の大学で集中講義をした時は、

1)前日は、世話をしてくれた先生と、遅くまでしっかり酒をのんだ。
2)初日は、英文科の先生方の歓迎会で飲んだ。
3)2日目は、その大学のほかの学部や学科の先生と飲んだ。関西の夏は、はも鍋がうまいことがわかった。
4)3日目は、学生や院生と飲んだ。

ということで、毎日宴会みたいなものだった。大学が用意してくれた宿泊場所では、通りを隔てたところに銭湯があるのだが、温泉を使っているということで有名で、私が泊っているところでも、その浴場の無料だったが割安だったか、サービス券をくれる。


大学の先生からも、あそこの温泉は行きましたかと聞かれるのだが、集中講義中一度も行かなかった。なぜなら午後9時でそこは閉まるのだが、毎日宴会で帰るのはいつも午後9時すぎだったので。