日食娘II


本日は、かつての私の指導学生で(とはいえ、私も含め、複数の教員の指導を受けてきて、私が最後の指導教員(当時は指導教官)だったのだが)、いまでは大学の教員をしている人と、大学の私の研究室で会う用件があったのだが、その時の世間話で、日食娘について、どうこう言うつもりはないのだが、同じようなことが過去にもあたったと指摘された。


それは台風が東京を直撃したか、かすめたのか、よく憶えていないのだが、台風の影響が東京にあらわれたときのことだった。20世紀の話である。その日は、午後3時から大学院の授業がある日だった。あの頃は金曜日に授業をしていた。たまたま会議かなにかで、午前中から大学にいた私は、台風の影響が気になっていた。休講にすべきかどうか、迷っていたのである。風雨は強いが、交通機関に支障が出ているわけではなかった。私は朝から大学にいるので、関係ないが、この風雨の中、通学してくる学生は大変かもしれないと思っていた。午後になると院生たちが研究室に、本日の授業はあるかどうか問い合わせてきた。大学全体で休講にはしていない。また私は大学にいるので、教員である私が授業のために大学に来られないという可能性は全くない。朝からいるのだから。そのため、現時点では休講はないと応えた。研究室の助手にも、授業アリと応えてもらうことにしていた。


結局、授業が始まる午後3時頃は、台風も通り過ぎ、晴れ間も広がり、授業をすることになんら問題はなかった。休講かと問い合わせてきた院生たちも、全員、出席していた。しかし、三人ほど休んでいる院生がいる。授業開始から1時間くらいたっても、彼らが出てこない。結局、彼らは授業を休んだのだが、これに対して、私は、さすがに授業中に一言を言わずにはおられなかった。


つまり、この三人は、そろいもそろって私の指導生なのだ。そして私の指導生ではない院生たちは、全員、私の授業に出席している。よりにもよって、私の指導生だけが、授業に出てこないとは、いったいなにごとなのだと、さすがに授業中に愚痴った。


歴史は繰り返す。指導生と縁の薄い私は、今度は、日食のため欠席する指導生を出してしまった。とはいえ、台風のときと、日食娘とは、事情は違うといえば、違うのだが。


ちなみに私(というか英文科)が大学院の授業のために使っていた演習室は、いまでは、私の研究室になっている。台風一過の青空が広がるような天候のときは、たしかに、昔、この部屋で愚痴ったときのことを思い出す。