空からの贈り物

『ナイト・ミュージアム2』(2009)には、エイミー・アダムズが出演していることは予告編からわかっていたのだが、どんな役だったかは、もちろん映画をみるまではわからなかった(ちなみに、この映画に『1』から出ているオーウェン・ウィルソンスティーヴ・クーガンは、小さいけれども大物俳優だよと、いっしょに見に行った人たちに話したのだが、全く理解してもらえなかった)。


今回も東宝シネマズの日は8月14日に終わらせてもらいましたという案内のあと、終わるだと、許さんというウルヴァリンヒュー・ジャックマン扮する)が怒って立ち上がるため、ウルヴァリンが怒っているので1年間延長しますという、わけのからない案内を予告編の前に見せられた映画館での鑑賞だったが。


エイミー・アダムズの役はエイヴィエイターのアメリア・イアハートの役だったので、これには驚いたが、同時に嬉しくなった。べつにエイミー・アダムズのファンということではなく(ディズニー映画『魔法にかけられて』でブレイクした彼女は、いまや、毎年複数の映画(主役もふくむ)に出ているので、映画館では、ふつうに出会う存在なのだから)、航空ファンとしては、イアハートの登場が嬉しい。


アメリア・イアハートAmelia Earhart(1897-1937)はアメリカの女性冒険飛行家で、1932年、女性による大西洋の単独ノンストップ横断飛行(ロッキード・ヴェガで)に成功し、アメリカの「議会からの空軍殊勲十字章」をもらったとWikipedia日本版に書いてあるが、それから『ミュージアム2』の吹き替え版でも空軍というような言葉を使っていたが(すみません。子供と一緒に見たので吹き替え版です)、バカヤロー、当時、アメリカには空軍は存在しない。陸軍航空隊とか海軍航空隊しかなく、陸軍航空隊が陸軍から独立してアメリカ空軍になったのは第二次世界大戦後のことである。Distinguished Flying Crossというのはなんと訳すのか知らないが「航空殊勲十字章」くらだろう。議会が「空軍」の勲章を民間人に授与すること自体、おかしいと気づくべきである。なお映画で一言も触れられていなかったが、フランス政府からもレジオン・ド・ヌール勲章をもらっていて、たぶん、こちらのほうが格が上だろう。


冒険的偉業を成し遂げただけでなく、男性の専属分野だったところに進出した卓越した女性であり、生前は国際的名声を誇ったし、死後もなお、アメリカではスミソニアンの一部に愛機ヴェガが飾られていることからも、アメリカ人には歴史上馴染み深い人物だろうし、航空ファンで彼女の名前を知らない者はいない。


実際、もしアメリア・イアハートが現在に蘇えって、彼女に出会うチャンスがあれば、私はただひれ伏すしかないだろうし、でも、一生の宝物にすべくサインをもらおうとするだろう。日本版Wikipediaには、「「テイク・フライト」天海祐希がイアハートを演じた舞台。(2007)」 というのが紹介されている。知らなかったし、知っていても、見に行くことはなかっただろうが、天海祐希も『アマルフィ』の役よりも、こちらのアメリアの役のほうが似合っているような気がする。


映画のなかのエイミー・アダムズは、アメリア・イアハートに似ても似つかない顔をしているのだが、それでも、主人公のアダム・サンドラーと絡み、最後に、愛機ヴェガで自然史博物館の展示物を届けたあと(道路に着陸するヴェガは、もう少し大きいのではという機もするが、実物を見たことがないので、なんともいえない)、夜が明けるため、またもとの場所に戻るべく空へと飛び立つときのパセティックな場面には、やはり胸がつまるものがあった。


彼女の最後のフライトは死のフライトだった。彼女は伝説となる。映画は、その最後のフライトを髣髴とさせるものがあった。離陸した彼女は永遠に飛び続けている感じもしたのだ――たとえもとの博物館に戻るべく方向転換をしていたとしても、着陸する場面はなかったからだ。


映画では一言も触れられていなかったが、彼女は、1937年ロッキードエレクトラで、太平洋横断飛行中に南太平洋で消息を絶って、いまも遺体は発見されていない。