ウィングマーク


私は、もちろん飛行機どころか車も運転できない人間だが、パイロットという存在にはあこがれもあるし、また尊敬している。


たとえば軍人で、パイロットそれもたとえば空軍で戦闘機乗りといったら、ある種のスター気取りで、きざで、目立ちたがり屋で、気性も荒いという面もあるかもしれないが、同時に、高度な機械を扱える卓越したエンジニアであり、また天候、航路、地形から、機体の性能、機内環境などすべてを把握しておかねばならない超人的能力を要求され、軍人として戦略的思考と戦術的思考をともに駆使できる理論家であるとともに、みずからの命をものともしない勇猛果敢な戦士であり、またフライト前後、そしてフライト中に、さまざまな事象に配慮する神経質な人間でもあるし、同時に、航空を飛ぶことの危険性とロマンチシズムを知っているという点で、豊かな人間性をおのずと身につけている。


日本の航空自衛隊ではパイロットはウィングマークを左胸に付ける。右胸ではない。右胸につくのは航空自衛隊のマークというか徽章なので、これは関係ない。航空自衛隊は、パイロットだけではなくて、サポートする隊員が数多くいるだろうから、パイロットはむしろ少数派に属するだろう。だからウィングマークを持っていない航空自衛官が、幹部なり航空幕僚長になってもおかしくないし、むしろ彼らのほうがマジョリティの代表なので都合がいいのかもしれないが、それでも、航空幕僚長にはウィングマークを持っている人間がなるべきだと私は思っている。


また航空自衛官(元航空自衛官も含む)でウィングマークを持っていない人間が、戦術なり戦略について、偉そうなことをいっても、私は一切信用しない。空も飛べない、飛行機も操縦できない、飛行機を落とすことだけが専門の人間が何を言っても、それこそ空理空論である。