独身で家を持つ


たぶん間違い電話だと思うのだけれども、**さんのお宅ですかと電話がかかってきた。**さんというのがはっきり聞き取れなかったのだが、私の苗字の一文字は入っていたような気がする。ただ、知り合いでもなんでもないので、どういう用件かを尋ねた。


そちらの賃貸の件でお伝えすることがあるのですがと、ちょっと居丈だかに電話口で話してくる(休日の午後5時前だから、こんな時間帯に急用でもないのに電話してくるのは、どうせろくでもない電話だろうと推測する)。どうもまちがい電話でないかと思い、こちらは賃貸ではないので、なにかまちがいではないですかと返答する。


「ああ、そうですか、まちがえました」とすぐに電話を切るかと思ったら、「こちらは**の「独身版」(というように聞こえたが、正直なところ、この漢字でよいのかも不明。**の部分は聞き取れなかった。)からかけているのですが」と、こちらの返答をはなから信じていない。たぶんほぼ間違いなく間違い電話だと思うが、そのことをわかろうとしないで、電話を切ろうともしない。


「じゃあ、どうして独身で家をもとうとしたのですか」と聞いてくる。そんなことは余計なお世話で、そんなことをお答えする必要はないし、またそもそもどういう用件かと聞いたら、「いや、独身で家をもうととしたのは、どうしてなのかと、ちょっと聞いてみたくて」と生意気な口ぶりで聞いてくる(声の感じからすると若い)。


そんなことをいわれても。というか、賃貸で高いお金を毎月払い続けるよりは、ローンで一戸建てかマンションを買ったほうが安いし合理的だと考える人間は多いだろう。あるいは仕事をもっている女性で、持ち家(マンションも含む)を持っているのは、できる女の証明のようなところがあって、珍しいことではない。


だから、まるで、独身者で家を持っているのが、よほど珍しいか、よほど恵まれているのか、よほど不正をしたのか、よほどのバカかというような口ぶりで、もう全く理解できない不可解な奴だという口調で尋ねられても、狙いはどのへんにあるのだろう。まちがい電話なら、こんなやつに話をもってこられてあれこれ言われる顧客は、いい迷惑だろうと思うし、詐欺師で人を陥れようとするなら、どう陥れようとしているのかさっぱり見えていない。生意気で不気味な奴だと思いつつ、様子をうかがうために黙っていたら、むこうから電話を切った。なにもいわずに。よほどのバカかと思われたのかもしれないが、それにしても独身者は家を持ってはいけないらしい。


あるいは連休中なので、いるかどうか空き巣調査なのかもしれないが。