アラジンのストーブ


メールありがとうございます。
まあこれで私も50代後半になったので、
もう歳を取らないことにします。
今後は、誕生日は忘れます。
60歳までに病気で死ぬのがこれからの目標です。


アラジンのストーブ。まだ売っていることは知っていましたが、まさか買うとは。
けっこう高級品ではないですか。
国産の石油温風ヒーターのほうが安価で,
安全面でも同等という気もしますが、
アラジンのストーブは、
優れもので変わらぬデザインが
それを証明しています。
たたずまいに風情がありますよね。


数年前、昭和の時代を舞台にした、ある日本映画で、
アラジンの石油ストーブがさりげなく置かれていて、
いっしょにその映画を見に行った学生たちに、
「あれこそ昭和のシンボルだ。
イギリスの舶来品なのだが、
性能がよく安全性にもすぐれ、
しかも全然デザインを変えていない優れもの。
私の家でも昔使っていて、
小学生の頃からずっとアラジンのストーブだった。
昭和のベストセラー製品、
いまもなお同じデザインであることが、その優秀性を物語る」と、
熱弁をふるったのですが、 
学生たちは、あまりぴんと来なかったようです。


アラジンのストーブは、昭和30年以降、
東京タワーが出来てから以後に入ってきたもので、
まさに昭和の製品。高級品でしたが、
たしか『暮らしの手帖』の商品テストで、
その性能が絶賛されていて、
新しい優れ物が大好きな父親が、高価なものでしたが、
いち早く購入しました。
父親はそれを大事にしていて、ふだんは何もしない父親でしたが、
アラジンのストーブだけは、こまめにその芯を掃除していました。
今でも、アラジンのストーブには、一週間に一度、芯を掃除せよと
指示してあるそうですね。


ちなみに本日は、昨日とどいた、
ディアゴスティーニ東宝特撮映画DVDコレクションの
第4回配本を見ました。
作品は『海底軍艦』。
これもアラジンのストーブと同じくらいなつかしい。
母親といっしょに映画館で見たことを思い出しました。
私が小学校6年生くらいの時です。


後ろに眼が向いているときはなつかしくて、
いろいろ思い出されるのですが、
しかし眼が前に向くとなにも見えなくなります。


昨年、学会に手紙がきていて、
それは、昔、世話になった方が学会誌のバックナンバーに投稿されているのだが、
その方の消息はわかるかという問い合わせでした。手紙の主は老人でした。


そのバックナンバーというのが1970年頃のもの。
その頃に雑誌に投稿していた中年の人は、
いまでは引退、退官し、
ひょっとしたら死んでいるかもしれず、
当然、会員でもなくなっているはず。
そのため、よほど有名人(いい意味でも悪い意味でも)でもないかぎり、
消息など、わかるはずもない。
そして
同じようなことが先週も私の周辺であったのですが、
いまから30年前、40年前のことを聞いている老人は、
なにか耄碌しているのではないかと、
私の知人たち数人で、あれこれ詮索したばかりです。


ただ、そこでひとつだけ皆が納得したコメントをした人がいました。


それは、老人になると月日がたつのが早くで、
30年前なんて、ほんの一年前くらいにしか感じられないはず。
だから昔のことと思わずに、つい最近のこととして尋ねてきたのだという意見。


なるほどそうかと誰もが納得。


そうなら、結局、長生きしても、
長い人生という感慨はないだろうということになる。
長生きする人は、あっというまに
70歳、80歳になっているという感覚かもしれない。


長生きしても、あっというまに終わる人生。
なんという皮肉でしょうか。

それではまた。