名駅


これは「な・えき」ではなく、「めいえき」と読む。


秘密のケンミン・ショーのスペシャルで、名古屋駅のことを名駅(めいえき)と言ってしまうのは愛知県民しかいなという、県民の秘密が披瀝されていた。まあたしかにそうだろう。名駅と聞いて、これが名古屋駅の略称とわかるのは、私のように名古屋出身(広くは愛知県出身)の人間しかいないだろう。


おかしいのは、「なごやえき」と「めいえき」では、1文字しか少なくなく、かな表記、あるいは発音上、略称といえるのかどうか疑問に思われるかもしれない。たしかにそうである。ただ、漢字で書くと「名古屋駅」から「名駅」となって、漢字4文字から漢字2文字となって、たしかに略称かもしれない。それにしても「なえき」ではなく「めいえき」である点は不思議である。


いわれてみると。番組では、名古屋を「名」と略し、発音も訓読みの「な」ではなく音読みの「めい」にする傾向は、昔からあって、たとえば名古屋城のある公園(それは私の高校の近くの公園でもあったのが)、それは「名城公園(めいじょう・こうえん)」と呼ばれていて、おそらく正式名称なのである。あるいはさらに付け加えると、大学名で「めいだい」というと、名古屋では「明治大学」の略称ではなく「名古屋大学」の略称なのである。


しかし「名古屋駅」という名前のJRや私鉄や地下鉄の駅はある。と同時に名古屋駅周辺の地名には「名駅」が正式名称として使われている。はっきりってへんなのだ。


名駅めいえき」といわれて、たしかに私には名古屋駅だとわかるのだが、私自身は、昔も今も、たとえばタクシーに乗ったら「名古屋駅まで」と言っているし、これからも言うと思う。タクシーの運転手に「名駅行ってちょ」あるいは「名駅、行ってちょーでゃー」などという名古屋人などいないと思う。いても、こてこての少数派では。


ただ番組を見てみると、「名駅めいえき」という言い方はかなり浸透していて、私のように自分で使うには違和感を覚えるという世代はすくなくなってきているようだ。


違和感。そう、たとえば東京で新宿までタクシーで行くときに「じゅく、まで行って」とえいば通ずるかもしれないが、普通はそんなことはいわないだろう。それを言ってしまっているのだ−−名古屋人は。それを地名にしているのだ、名古屋人は。「新年あけまして」という表現がまちがいであるという誤った考え方を受け入れる大方のバカ日本人ほど、名古屋人は馬鹿ではないと思うが、変であることはまちがいないだろう。