アル中な日々 3

今週の初めのことだが、ある学生が私に会いに大学に来ると連絡してきた。それはそれで、いいのだが、まあこちらのほうに用があるか、あるいはなにか観光旅行にでも来るのかもしれないと考えた。ちなみに私の大学は観光名所となっていて、土日ともなれば一般人が数多く、キャンパス内を散策・見学している。以前、テレビで『ちい散歩』を見ていたら、大学のキャンパス内が散歩コースになっていることを知って驚いた。散歩コースか。


ということで、私の研究室で会うことにした。非常勤先で教えていた院生である。旅行した時のお土産をもっていくのだとメールがあった。旅行の話は、非常勤先で最後の授業のあとおこなった打ち上げの席上で聞いた。それはいいのだが、お土産をもってくるという話は、初耳である。まあ、来たければ、べつにかまわないので、どんなお土産かも聞かずに、研究室で会う約束をした。


ここで念のために書いておけば、非常勤先の院生から旅のお土産をもらうということは、一種の不正行為につながりはしないかと危惧する向きもあろう。その場合、もらったものの値段ではなく、もらうということが問題になるということで。


今回の場合、お土産は賄賂にはならない。というのも私は非常勤先での最後の授業が終ったすぐあと、成績を大学に提出したからだ。そのあとの打ち上げで、旅行のお土産の話をはじめて聞いたので、お土産が成績に影響してはいない。いや、いくら事務に成績を提出しても、成績変更はできるかもしれないと思うかもしれないが、もし変更するとすれば、成績評価を下げるか、成績なしにするのかいずれかであって、もしそうならお土産の賄賂性はゼロである。すでにお土産とは全く関係なく「優秀な」評価を出しているからである。また、たとえそうでも今後もその大学で教えて、その院生を教えるチャンスはあるのだから、賄賂性があるのではと思われるかもしれないが、非常勤は今年度で契約が切れる。今後、その大学で教えることはないので、成績を出すチャンスもない。また今後留学し外国の大学で勉強するので、私の大学に入学するということもない。ということで、せっかくのお土産をむげに断るのも失礼だということで、ありがたくいただくことにした。


問題はそのあとである。研究室で会って話をしたところ、その院生は、わざわざやってきたということだった。なぜなら、私が呼びつけたらしい。え、呼びつけた?


打ち上げの宴会の席上、旅行の話をした(そこは私の記憶がある)。そしてお土産を買ってきたので、今度、送らせてもらうと院生が話したところ、そのお土産は、送ったりしたら、壊れてしまうかもしれないので、それはやめること。で、次であるが、研究室にもってこいと、私がその院生に話したとのこと。え、それじゃ、やっぱり呼びつけているじゃないか。そこは私の記憶に全くない。


すくなくともしらふの状態で考えると、私のほうからもらいに行く、あるいはどこかで会う機会があれば、その時にもらうということは言うだろうが、私の研究室にもってこいとはいわないだろう。大学外で会うよりは、大学の研究室で会ったほうが、無難だと考えたのだろうか。どう記憶を辿っても、その時に、私が何を話したのか、空白のままである。もちろん院生が聞き間違えたという可能性はゼロではない。でもその可能性は10パーセント。残り90パーセントは、私が言ったのに、自分では記憶がないということだろう。


深酒して記憶がとんだのだろうか。いや、深酒はしてない。となるとわずかなアルコールでも記憶がなくなってしまったのだろうか。完全にアルコールに支配されているのではないか。なさけないわい。