臨場ひどい


先週、批評の復習と称した一文を毎日書いて、その後半で、テレビドラマ『臨場』に触れ、ねこそぎ拾うことが批評の使命であるかのように書いたのだが、そのドラマ、いわゆる職場で男に負けたくないキャリア・ウーマンを扱った物語があって、それをみて私は頭をかかえた。ひどすぎる。いまどき、こんなステレオタイプの人物と、それ以上に、こんなステレオタイプの反応はないぞ。


男性中心社会のなかで、男性主体のステレオタイプを提出する、あるいは戯画化を行うことに問題はない。それがどんなにひどい戯画化であろうとも、そこにみられるのはアイロニーであり自己批判の精神なのだから。


しかし男性中心社会の他者である女性とか外国人のステレオタイプなり戯画とは、それは自己批判精神を欠いた、たんなる差別行為であることを知らねばならない。他者へのステレオタイプ化ほど、ひどい差別はないと知るべきだ。


だいいち今の時代に、たとえば女は男を競い合おうとするな、そんなことをすれば、自己嫌悪に陥るだけだ、女は女同士、楽しく面白おかしく生きていれば、死ぬことはなかったのにと考える馬鹿がいるか。いまこの時代に、こんなことを平気でいえる男は、ほんとうに脳みそを路肩にぶつけて死ぬべきであろう。そんな恥さらしな男は、生きる値打ちなどない。


これは『臨場』の原作者のせいではない。ドラマは、横山秀夫の原作とはかけ離れた世界を構築し、また原作にはないエピソードを独自に展開しているのだから。先週ほめておいた番組をけなすのは心苦しいが、この回の『臨場』は最悪である。


なお明日からは「Tモンキーズと不愉快な仲間たちの、お笑い日本英文学会」の連載がはじまります。