オセローの復習2

オセローの復習 2
宝塚篇

おそらくその女性はてんかんの発作を起こしていたと思われのですが。すぐに係員が駆けつけ、一瞬にして黒山の人だかりができたため、倒れている女性の姿は見えなくなったものの、かなり重症だったようで、宝塚劇場から駅へ向かうときには、救急車が来ていました。


てんかんについて、詳しくは知りません。実は、昨年、大学院での授業で『オセロー』を扱ったとき(オセローは第4幕第1場でてんかんの発作を起こして倒れます。Epilepsyだとイアーゴーは説明します)、てんかんの発作を見たことがあるかと院生に質問したところ、誰も見たことはありませんでした。私はそれまでに2度見たことがあります。ただし、てんかんは、時代病というところもあって、私の両親(皆さんからすれば祖父母の世代)は、学校で毎日のようにてんかんを見ていました。一日に一回は、誰かがてんかんで倒れた。またひどいときには、毎時間、教室で、誰かひとりくらいは、てんかんの発作を起こしていたとのこと。


てんかんは、昔は「子どもの病気」ともいわれ、学校などではひんぱんにてんかんの発作がみられたのです(私の両親は、数えきれないほど、てんかんの発作をみていました)。また発作が起きたときは、舌をかまないように、鉛筆をくわえさせるとう応急処置も両親から聞いて知っていました――なお、これはかえって危険なこともあり、現在では、鉛筆であれ何であれ、発作を起こしている人の口のなかに入れてはいけないとされていますので要注意。


ただ、そのすべてが、てんかんだったかどうか、わかりません。昔のことです。今よりもはるかに束縛と強制と抑圧の強かった時代のことです。そんな環境のなかで、緊張とストレスのあまりヒステリー状態になった子どももいて、それがてんかんとまちがわれたりしたことも多かったのようにも思います。また、あえててんかんの症状を真似る子どもがいたかもしれません。


過去には、著名人でてんかんの人は数多くいました。シェイクスピアの戯曲では、『ジュリアス・シーザー』のなかでシーザーがてんかんであると語られています。ナポレオンが、あるいはドストエフスキーてんかんであったといわれ、天才政治家たちの手腕、天才芸術家たちのヴィジョンなど、てんかんと関連づけられて語られることも、昔は多かったことをここに記しておきます。


したがって、イアーゴーが気を失って倒れているオセローの姿を、てんかんの発作を起こしていると、たまたま通りかかったキャシオにいうのは、もちろん、イアーゴーがその場でとっさに思いついたうそかもしれませんが、同時に、てんかんの日常的発生を考えると、誰もがそれをうそとは思わなかったともいえます。


昨年、2009年の9月私は、てんかんの発作で苦しむ人を目撃したのですが、これが私の人生のなかで三番目の目撃例でした。