Memento Mori 2

ちなみにMemento Moriというタイトルの用法については、あえて、拡大解釈して使っているのであって、用法を知らないわけではないことはおことわりしておく。


なにしろ、私が、今は亡き東京教育大学の英文科に入学して、1年次に授業で読まされた、はじめての英語の長編小説はMemento Moriという小説だったのだから。ミュリエル・スパークの小説で、当時すでに翻訳は出ていたが、まじめで意欲的な学生だった私は、翻訳を参照せず、授業で使ったペンギン・ブックスで、原文と格闘した(1年から2年にわたる授業で、その小説は読みきったと記憶している)。幸い、スパークの小説は、中身はともかく、英語はわかりやすかった。Memento Moriという言葉については調べたし、理解はしている。


さて、このブログをはじめるとき、誰からも読まれない、誰も読もうとも思わないような、ブログにして、あとは独り言を書き連ねるつもりで、魅力も、意味もないブログ名を使おうと考えた。とにかく、頭をひねったりせずに、投げやりで、いい加減なブログ名にしようとした。そのほうが注意をひかないからである。


その後、どういうわけか注目を浴びてしまったが、私は自分からは誰にも言いふらしていない。まあネット上で、常に、新情報を収集している人たちの注意をひいたのだろうが、しかし、これは憶測だが、私のブレインから情報が流れたのかとも思っている。


このブログをはじめるにあたって、ある人物にブログをしたいのだがと相談した。そうしたら電話を通して、パソコンの操作を指示するといわれ、そのようにしてもらったら、あっというまにできてしまった。そんなに簡単にできるとは思わなかったので、ブログ名も考えていなかったのだが、思いつくものなら何でもよいから、とりあえず付けてみるということで、焼酎の銘柄にした。本来ならLento(音楽用語)にしたかったのだが、さすがにこれは使用済みでむり。ならばRentoにして、不正確な音楽用語にして、意味不明というブログ名にした。


そのブレインは誰かは、その人に迷惑がかかるかもしれないので、秘密にする。まあ拷問されたら、痛いのは嫌いなので口を割るかもしれない。また大きな額の金を提示されたときも、お金は好きなので、口を割るかもしれない。基本的に根性なしだが。ただ、その人が、言いふらしたという証拠は何も存在していない。


ちなみに、では、とっさになぜ焼酎の名前にしたのかといえば、その頃、ある編集者と酒を飲む機会があり、「レント」という焼酎を紹介されたからだった。いまではどこの居酒屋にでも置いてあるような人気のある焼酎だが、というか、当時も居酒屋に置いてあったのだから、名の知られた焼酎なのだが、しかし、私は何も知らなかったので、興味深く話を聞き、飲んでみたら、口当たりのよい、まろかやかな、よい焼酎だった。それが印象に残っていたので、ブログ名もとっさにそれにしたのである。


その編集者は、ある意味で、間接的にこのブログの命名者でもあるのだが、ただ、基本的に練りに練って考えたわけでもないので、お名前をここで出すことは――私と仕事をし、さらには好きな焼酎の銘柄を私に教えた事実を公表することは――、その方には不名誉なことになりかねないと心配もするのだが、同時に、多くの著者たちと幅広い交友をもち、また多くの著者たちの可能性を開拓された、その優れた編集者のスケールの大きさ、奥深さの証拠として、私の存在(たぶん、その編集者を知る人たちからすれば、意外な感がぬぐえないとは思うのだが)が、わずかなりとも、貢献できればと考え、いや、ぜひとも、そのように考えていただきたいと思う。


その方とは、昨年の夏、50歳の若さで、7月25日に亡くなられた、元青土者の編集者、津田新吾さんである。