灼熱地獄

いまから約1週間後、私が住んでいる埼玉県南部(東京都に接している)でも、昼間は、家のなかで引きこもっていた、ほとんどエアコンのお世話になっていて、外の様子がわからなかったのだが、夜、所要があって外出したら、外気のあまりの高温と湿気に驚くことになる。夜になっても、猛暑日の昼間のような暑さがおさまっていないのである。あとで調べると、この日、私が暮らしている地域でも、人間の体温に近い猛暑日だったことがわかるだろう(実は、この記事は8月16日に書いている)。


べつに今年に限ってのことではないが、猛暑になると、思い出すことがある。いつの頃だったのか忘れたのだが、たぶん私が高校生くらいのときだろう。地球物理学者の竹内均東京大学教授(当時)が、NHKのテレビの番組で、話したことである。たまたま家族全員でみていた記憶がある。


いまNHKの教育テレビで放送している「視点・論点」というような15分くらいの番組で、正確なタイトルは忘れたが、テレビ・コラム、ニュース解説的な番組のなかで(総合テレビのほうだったのかもしれない)竹内教授が、警鐘を鳴らすコメントをして、それはいまでも覚えている。竹内均については、科学についてとくに興味もなかった高校生の私でも知っているくらいで、啓蒙家としても活躍されていた竹内氏は、高校教育にも深く関係し、私も竹内均著の『物理』の参考書で勉強したことを覚えている(成果は聞かないでほしい。これは著者のせいではなく、私のほうがモーティベイションもなく、頭も悪かったのだ……)。またテレビなどにもよく出演していて、アポロ11号月面着陸の際には、ほぼ毎日のようにテレビでコメント、解説をしていたから、超有名人というべき学者であった。


その竹内教授は、テレビコラムのような番組のなかで、自分の計算では、いまのようにエネルギーを使いつづけてゆくと、21世紀になると地球は灼熱地獄になると予言したのである。どのような計算かは覚えていないし、また計算を説明されても、私にはわからなかっただろうが、とにかく確信をもって予言されたのである。


とはいえ当時としては、21世紀といっても30年近く(あるいは30年以上)先のことであったから、ピンとこなかったし(いまから30年後の2040年に地球がどうなっているか、わかりますか?)、また問題が起これば、解決策も講じられるだろうと思いつつ、それでも「21世紀には灼熱地獄」という予言には感銘をうけた。


そして21世紀。灼熱地獄ではないだろうか。この灼熱地獄といっていい猛暑は、気象関係者がいう、偏西風の影響などで説明がつくものではないだろう。また地球温暖化問題といえば、それで解決がつくものでもないだろう。二酸化炭素放出を抑えるキャンペーンは原子力発電への歯止めなき依存をもたらす口実でしかないが、原子力発電をつかったところで、エネルギー使用はかわらないから、灼熱地獄は押さえらない。これから毎年、もっと暑くなる。エネルギー使用による灼熱地獄化は着実にすすんでいる。地球の気候ではなく、文明が灼熱地獄をもたらしている。