寄附行為

 毎日更新している日記(というよりエッセイ)が、あまりに楽しすぎて、肝心なことを忘れていた。日本英文学会関東支部について疑問点を書き連ねることである。
 日本英文学会を支部方式にするのなら、それはそれで反対はしない。そのほうがいろいろな面で運営上都合がよかったり、あるいはお上のほうから支部方式を求められているというのなら、いや、理由はなんであれ、支部方式にするというのなら、それはそれでよい。しかしどうせするならきちんとしてほしい。日本英文学会関東支部発足のお知らせというのが関東圏の会員に配られた。富山太佳夫の名前で。この人は、関東支部支部長という肩書きである。
 以下引用してみる。

去る2006年5月19日の日本英文学会理事会において、関東支部の発足が正式に認められました。関東支部の発足にしたがい、このお知らせを、関東地区(茨城県、神奈川県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、栃木県、新潟県)在住の日本英文学会会員みなさまに送らせていただく次第です。

中略

なお、支部の正式な発足をもちまして、支部設立準備委員会は解散され、初代理事会が発足します。会の規約については、第1回大会でお諮りする予定です。

引用したのは、最初の挨拶のところで、文書はまだつづくのだが、この一見なんでもないお知らせだが、なんという不透明なことだろう。以下列挙してみる。


 1.理事会において発足が正式に認められた?
 一般会員である私に理事会でどんなことが話しあわれたかわからないが、重要な決定であるため、理事会だけの決定ではなく、評議員会の意見または承諾が必要だろう。いや理事会が必要ないと認めれば評議員会の意見を聞く必要はないが、結果的に会費の値上げにもなり、またこの関東支部発足の件で2005年に理事会がもめたことは、わかっているから、会員が自分の意見を代表者を通して述べることができる評議員会は重要である。すくなくとも正当な手続きを経て決定というのであれば、評議員会にも諮って十分に審議した上でというくらいの但し書きがあってしかるべきである。
 繰り返すが理事会がもめたことはわかっている。そのため発足に際しては、十分な審議を経て承認を得たことを明記すべきである。
 この点については日本英文学会のホームページの「情報公開のページ」で、寄附行為を探して、確認してもらいたい。寄附(あるいは寄付)行為というのは、お金を寄附すること、寄附のお願いではない。ある国語辞典の定義によれば「財団法人を設立するために一定の目的を決めて財産を提供し、その運用のための根本規則を定める行為。また、その根本規則」。名前は変だが要するに学会の会則・規約と考えればいい。その第29条を読む限り、理事会は支部問題のような重要な問題は当然、評議員会に諮るべきである。


 2. 支部設立準備委員会って何?
 支部発足をもって、解散したらしいこの会について、とやかくいうことはないかもしれないが、一般会員からしてみれば、日本英文学会のなかに、準備委員会が発足したということなのだろう。人選は誰がしたのかわからないが、理事会が決めたということか(それは問題にしない)。
 ところがこの準備委員会は、「設立準備集会」を今年開催し、以下のような文書を、「英文学東京若手の会」に出していることが、日本英文学会のホームページからわかる。

 日本英文学会の関東支部(仮称)設立準備集会を、2006年1月14日(土)に青山学院大学6号館621教室にて、15時30分から行います。本支部は、英文学会として支部組織を整備しなくてはならないという制度的要請と、若手研究者の育成、研究者間の柔軟かつ活発な交流などの内発的な必要の両面から、設立が求められていたものです。従って、本支部の設立に当たっては、英文学会理事会の示唆、助言と同時に、この1年ほど続いてきた「英文学東京若手の会」(以下「若手の会」)の活動実績が参考になると思われます。「若手の会」はこの1年間例会を重ね、その名称に示されているとおり、活動は「英文学」分野にかぎられるものの、これまでになかったジャンル横断的企画や、若き大学院生による新たな視点からの研究発表などを通じ、多くの参加者を得て、少なからぬ成果をおさめてきました。
 上記の実績を参考にしつつ、日本英文学会の支部としての設立に際して、いわゆるイギリス文学のみならず、アメリカ文学、英語学、英語教育などの幅広い分野の方々の積極的な参加を求めたいと思います。
 今後の手続きとしては、同様に設立準備中の関西支部とも連絡を取りながら、ここでご案内しております「設立準備会」の成果をもとに、英文学会の理事会、評議員会、代表者会議で設立を認めて頂き、正式に発足することになりますが、以下略。

 設立準備集会を関東全域の会員(本来なら全国の英文学会会員)に向けて通達するというのではなく、なぜ「英文学東京若手の会」に向けて通達しているのか。しかもこの若手の会というのは、イギリス文学の若い研究者の集まりなので、アメリカ文学、英語学、英語教育の研究者が集う日本英文学会のような集団のモデルになり得ないのに、その「実績を参考にしつつ」と書いてある。単科大学を、総合大学のモデルにするようなもので、それはおかしい。
 またこうした文書を東京若手の会に出すのなら、たとえばもし、埼玉英文学者の会があれば、そこにも通達を出すべきだし、同様の会は探せばいろいろあるはずなのに、まったく無視している。というよりも英文学東京若手の会と癒着しているという話なのだろう。けっ!何が「制度的要請*1」じゃ。出来レースじゃないか、あほらし。
 それから先の文書の最後にある「代表者会議」。たぶん全国の支部の代表者が集まってする会議なのでしょうが、「寄附行為」には何も書いてございません。まったく実効性のない会議でございます。きちんとしてくれ。


 3.富山太佳夫ってどこから湧いてきたの?
 もう一度、支部発足のお知らせを引用してみる。

なお、支部の正式な発足をもちまして、支部設立準備委員会は解散され、初代理事会が発足します。会の規約については、第1回大会でお諮りする予定です。

ということはこの支部は理事会も規約もできてないじゃないか。いや、ものごとのはじまりというのはなかなかむつかしい。ほんらいなら会員(支部員)の意志を反映するかたちで理事を選び、その理事が支部長を選ぶということになるだろう(日本英文学会の寄附行為に準ずるなら、評議員制になるのかもしれないが)。また理事会や支部長選挙など、すべて規約に基づいて行なわれることになるので、第1回支部大会も、規約にもとづいて開催ということになるが、規約はまだできていない。
 もちろんそれは揚げ足とりだといわれるかもしれない。最初はしかたがない。すべて暫定的に決めて、次回以降、規約にのっとるしかないのだから。それはそうだ。とすれば富山支部長は、まだ暫定的支部長だろう。もちろん富山氏の知名度、実力、実績からすれば、富山支部長が正式な支部長に選ばれる可能性はきわめて高い、間違いないと言ってよいだろう。でも、いまははしゃぎすぎ。このはしゃぎすぎは次回以降に批判するが、それにしてもなぜ富山が支部長に選ばれたのか、どこから湧いてきたのか、どうしてかかわっているのか、まったく説明がない。こんな不透明なことでいいのか。

*1:この制度的要請とはどういうものか、文部科学省あるいは学術振興会から文書が出されていれば見せて欲しいと、日本英文学会にいずれ正式に要求するつもりである。べつに批判ではなくて素朴な質問として。